開発生産性のような「ベロシティ的な考え方」がベロシティをわかりにくくしている

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ベロシティほど言葉が先行する割に、わかりにくいものはないかもしれません。そう思えるほど、お客さんからも質問が多いです。ベロシティとは何なのでしょうか?

ベロシティとは何か?

一般的にベロシティとは、スプリントにおけるチームが完了したユーザーストーリーのストーリーポイントの合計量です。

これをアジャイル開発用語を抜きに説明すると、ベロシティとは、特定の期間におけるチームが完了した仕事の合計量です

仕事とは何か?

次に仕事について考えてみましょう

たとえば、アジャイル開発では、仕事をユーザーストーリー(略してストーリー)として扱います。ユーザーストーリーは、ざっくりいうとユーザ価値です。価値がないならストーリーにはなりません。

もうちょっと詳しく書くと、ユーザーストーリーはタスクに分割されたりします。ストーリーが価値を表すので、分割されたタスクは価値の一部でしかありません。よって、タスクひとつを完了しても、ユーザは満足できません。

では、アジャイル開発以外では仕事をどう扱っているでしょうか? これはプロジェクトや現場にもよりますが、従来型の開発の場合、仕事は作業(ワーク。タスクに似た存在)に分割して管理していきます。

何で見積もるか?

次に見積もる方法を考えてみましょう。

アジャイル開発の場合、ユーザーストーリーを見積もる方法のひとつがストーリーポイントです。内容は割愛しますが、工数とは違って、相対的な大きさで見積もる方法です。

たとえば、「ちょっと文言変更するだけのストーリー」を、1ポイントとした場合、「会員登録できるストーリー」はどれぐらいのポイントになるでしょうか? とりあえず10ポイントぐらいにしておきましょうか。この1や10というポイント数にはあまり意味はありません。ただの相対的な大きさを表す数値でしかないのです。

僕はポイントの説明をするときに、よく、通天閣の大きさを1ポイントとした場合、東京タワーやスカイツリーの高さは何ポイントでしょうか?というワークをするのですが、「高さ」という単位で考えると、通天閣の高さが103mで、東京タワーの大きさが333m、スカイツリーが武蔵にちなんで634mです。

しかし、アジャイル開発ではそこまで正確な数字は求めておらず、できるだけコストを掛けずに見積もりをしたいので、ストーリーポイントをつかって相対的に見積もります。よって、通天閣を1とすると、東京タワーは3ぐらい。スカイツリーは6ぐらいと見積もります。

ストーリーポイントは、ストーリー自体の複雑さを考慮しますが、ベテランだから6ポイントとか、新人だから3とかになりません。通天閣が1だと、誰がどう見ても東京タワーは3ぐらいにしかなりません

では、従来型はどうでしょうか? おそらく人日・人時など「工数」と呼ばれる単位で見積もるケースが多いのではないかと思います。

仕事の量とはなにか?

アジャイル開発だと(ストーリーを使っているのであれば)ストーリーポイントで価値の量を見積もります。この場合、ベロシティは、顧客価値の量と言えます。

従来型だと、工数の量で見積もります。工数は作業にかかる時間です。この場合、ベロシティ的な考え方で計算すると、ベロシティは作業時間の量になります。

ベロシティ的な考え方とは何か?

ベロシティとは、スプリントにおけるチームが完了したユーザーストーリーのストーリーポイントの合計量でしかないのですが、ベロシティ的な考え方で量を計算する場合もあります。ベロシティ的な考え方とは、特定期間の仕事の合計量です。

合計量を知りたいのは、チームがうまくやっているか?をアウトプットの量で測りたいからだと思います。開発生産性も似たようなものだと思います。

ただ、ここまでに書いたように、

  • 仕事とは何か?
  • 何で見積もるか?

によって、

  • 仕事の量とは何か?

が変わってきます。

アジャイル開発的には、ユーザ価値を重視しますが、現場によって価値観が変わるのは当たり前です。作業やタスクを完了させることに価値がある現場もあれば、ユーザ価値を大切にする現場もあります。みんな違ってみんないい時代ですから。

ベロシティを計測して利用する前に、まずは、あなたのチームにとって仕事とはなにか? 何で見積もるか? 仕事の量とは何か? を話し合ってみるといいかもしれません。

アジャイルな見積もりと計画づくりはクセがありますが、詳細はUdemyでも解説しているのでご興味があれば是非どうぞ。

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