娘が生まれたときのこと

娘が生まれたとき。それはすなわち僕が父親になった瞬間の話である。

うちの娘は生まれたときの体重が4キロ。普通だったら、「生まれたての赤ちゃんってお猿さんみたいー」とか聞くけど、元が大きいので、生まれたときから「人間ですね」だった。髪の毛もファッサファサ。

しかも、おぎゃーと泣かない。

少し時間を戻すと、娘が大きすぎるので、はやく産まなければならないという。よって、予定日より少し早く入院し、陣痛誘発剤を使って出産を早めようとするが、うちの子供たちは、居心地がよいのか、娘も息子もぜんぜんでてこない。

出産を行う部屋のすぐ横には、待機室があるんだけど、うちの嫁はそこに3日ほど泊まり込み、うんうん苦しんでいた。その間に、沢山の人が運ばれ、たくさんの命が生まれたという。それぞれにそれぞれのストーリーがあると遠い目で話していた(壮絶なケースもあったらしい)。

なかなか出てこない巨大な娘も、ようやく観念したのか、やっとでてきた。しかし、おぎゃーと泣かない。出てくるのに苦労したせいか、ちょっと弱ってしまったらしい。すぐにICUに運ばれてしまったので、「赤ちゃんとの感動の対面」というより、出産という不安が終わったと思ったら、出産後の不安に切り替わっただけだった。

それでもまぁ、母子ともに生きていてよかった。それと同時に、毎回こんな感じで乗り越えている産婦人科の先生やスタッフすごすぎて頭が上がらない・・・。

ICUの娘は、だんだん元気を取り戻し、最後の方はICUで一番大きな声で泣いていた。あとでわかったことだが、娘は産道をすりぬけるため、自分の鎖骨を折って出てきたらしい。スパイかよ。

ICUに入ると、娘以外にもたくさんの赤ちゃんがいて、いろんなものと戦っている。僕には自分の娘の心配しかできなかったが、他の親御さんのお気持ちは察するものがある。家族ができて、神社で「家内安全」を願うようになった。

現在、彼女はすくすく育ち、最高・最強の娘になりつつある。何事にも一生懸命で、難しいこともチャレンジする精神を持ち、ときにすごく頑固者。すでに好きな子もいるらしい。

いつまで一緒にすごせるかわからないけれど、彼女の人生が幸せでいっぱいであることを祈っている。