ハッカーと芸人

By: Silverisdead

前に友人と飲んだときに、「うちのエンジニアが芸人化している」という話を聞きました。その内容がとても興味深かったので、自分なりに考えをまとめてみると、なんだかさらに深い話になってきました。

芸人化するエンジニア

勉強会ブームの影響で、おもしろい話をしてくれるエンジニアがたくさん登場しました。エンジニアならではのネタが盛り沢山で面白く、情報がいろんなところで発信されるとても良い時代になりました。

そんな中、時代のトレンドを紹介する人が現れました。彼は勉強会を開催する中心メンバーであり、コミュニティでも有名人です。その人は技術や業界トレンドを紹介し、ちょっと先の未来を語ります。やがて、その人の話に感化される人が現れます。極端な例だと、その人の紹介するトレンド以外を否定する人まで現れてしまいました(すべてはアジャイルになるべきだとか)。

はじめはそれでよかったんです。でも、だんだん雲行きが怪しくなってきました。時間がたつにつれて、その人の近くにいた人は、その人に疑問を持つようになりました。たしかにトレンドとなる情報が盛り沢山ですが、内容が薄い。深い議論に発展しないのも気になる。この人は常日頃生涯現役と話しますが、そもそも本当にエンジニアなのだろうか?

そして、この違和感はだんだん大きくなっていきます。

ある時、その人が発信する情報が少し古くなりました。なぜなら、時代は止まりません。すると、その人はまた新しいトレンドを見つけてきて話します。プログラマの復権。アジャイル開発。世界で活躍するエンジニア。ビッグデータ。DevOps。IoT。ディープラーニング。FinTech・・・。

友人はそういう彼を見て「まるでIT系ニュースサイトを見ているようだ」と感じました。持ちネタが受けなくなったら、また新しいネタを考える。その姿はまるで芸人です。

エンジニアだったはずのその人が、いつの間にか流行りを追いかけるだけの芸人みたいになっていた。

友人は残念そうにそう言いました。

人を笑うものは笑われる

「当初、その人は尊敬を集めていたんだよね。だとすれば盛者必衰。明日は我が身だね」
「はい。明日は我が身です」
「でも、周りはそれを許してくれない。『がっかり』って一方的だから伝えるのがとても難しい。さらに、外で発表とかしていると『なにか面白い話してくれ』とか言ってくる人も多いからなぁ」
「ずっとそのキャラで行くなら、ずっと追いかけるしかないですよね」
「うん。でも、それは大変だろうね」
「はい。大変な戦いです」
「”老兵は死なず”という言葉もある。そして、”老兵はただ消え去るのみ”という言葉もあるね。老兵なのか、老害なのかはわからないけど」

昔、全然仕事してくれない先輩を相手にするときに、すごく悩んだことがあります。正直に言うと、なんで約束したことをしないのかわからなかった。できないのかわからなかった。「他人を変えるのは難しい。だから自分が変わる」という言葉もありますが、「そうはいってもさぁ」という気持ちがどこかにあります。

でも、それはきっと間違えていた。

ラジオでいいこといってる人がいたんですよね。「母親から”人に石を投げるな”と教えられた」

その後、彼はどうなったのか? みんなその芸人の話を聞かなくなったとさ。