元上司が亡くなった

By: Daniel Novta
元上司が亡くなったという話を聞いたとき「まじ?」としか言えなかった。社会人になり、横浜に出てきてはじめてお世話になった会社。はじめて配属された部署の部長がその人だった。

さようなら

お別れ会が行われると聞いて、せめて最後のあいさつだけでもと思い参加した。そとはうだるような暑さ。久しぶりに着たスーツ。電車に揺られながら「いい天気だな」と思った。

元上司は取締役なので、お別れ会は社葬という形だった。会場に着くと挨拶などがはじまっていた。そっと席について正面を見ると、たくさんの白い花に囲まれた元上司の大きな写真があった。

縁のあった人たちの話を聞いていると、周りから鼻をすする音がちらほら聞こえてくる。すましたような、少し笑っているような元上司の写真だけ時間が止まったままのようだ。

現社長が、すべてを振り絞るように別れの言葉を送った。目の前が滲んだ。本当の言葉は声に出すのが難しい。社長の人柄を感じるスピーチだった。

献花してあらためて元上司の写真に向き合う。言葉はでてこなかった。

会場を出ると、そこには見慣れた顔ぶれが並んでいた。僕が入社したときの部長陣だ。「来てくれてありがとう」。一緒に働くことはなかったが、尊敬する当時の部長がそう言ってくれた。深く頭を下げた。

帰りの電車で「僕たちは強く生きていかなければならない」と思った。窓の外はいつもと変わらない景色。

世界はとても美しく、生きるのは最高だ。