青春音楽小説『船に乗れ!』を読んで途方に暮れました

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『船に乗れ!』という小説を読んでぐったりしています。青春音楽小説ということで「『船に乗れ!』というのはオーケストラにのめりこめ!っていう意味かなー」なんて軽率に考えていました。ごめんなさい。あまり書くとネタバレになりますが、自分が感じた感想を書かずにいられないので書いてみます。

合奏と協奏

船に乗れ! Ⅰ (ポプラ文庫ピュアフル)

音楽学校が舞台なので、クラシック音楽の描写が多いです。ただ、まったく素人の僕が読んでも「なるほど、そういった醍醐味があるのか」というような、新しい世界が開く感じがあります。

そして、合宿やライバルの登場など、まぁありきたりな展開が続きますが、最後のほうでキュンキュンする展開に。青春っていいなぁってこのときは思いました。

独奏

船に乗れ! Ⅱ (ポプラ文庫ピュアフル)

第2巻で衝撃の展開が衝撃的に訪れます。1巻の終わりでかなり浮かれてしまってせいで、ここまで残酷な展開を書かなくても・・・と思ってしまうぐらいの衝撃でした。

ただ、思い返してみると、宮本輝さんの『青が散る』に似た残酷さなのかもしないと思うようになりました。それにしても辛い。読んでいるだけで辛い。

そして、主人公が受けた衝撃は、主人公の軽率な悪意によって、周囲の大切な人を傷つけます。

合奏協奏曲

船に乗れ! Ⅲ (ポプラ文庫ピュアフル)

そして最後の第3巻では、あらゆるものが壊れていきます。手に入れようとしていたものは手に入らず。大切な人は帰らず。どれだけ謝罪しても許してもらえず。主人公の未来に明るい光が全く差してきません。全然うまくいかないのです。

しかし、これが現実であると。まざまざと見せつけられた気がしました。

おわりに

音楽家の道は狭き門です。しかし、この物語で言いたいのは音楽家だけではなく、世の中のいたるところに狹い門があるということなのではないでしょうか。そういう場所で生きているんだぞと。主人公の苦悩は、身近な自分の苦悩のように思えました。

そして『船に乗れ!』とはどういう意味か? これは小説を最後まで読む必要があるのですが、僕自身が思うのは、上にも書いたように「現実から目をそらすな」というメッセージのように感じます。しかし、希望もある。

一番大切なことは単に生きることそのことではなくて、善く生きることである。

目を背けたくなる現実があったとしても、それが現実なのだという現実。あらためてそれを知り、僕は途方に暮れたのだと思います。