『君たちはどう生きるか』を読み終えたときに「うむむ!」と思わず声が出ました。子供向け作品でありながら、そして80年以上前の本でありながら、今読んでも心に響くすばらしい作品だったからです。少年時代にこの本を読んでいたら、何かまた違った人生があったかもしれない。人生を変えるレベルのスゴ本だと思います。
僕は、そして僕たちはどう生きるか
『君たちはどう生きるか』を知ったきっかけは、大好きな作家である梨木香歩さんの『僕は、そして僕たちはどう生きるか』読んだからです。読んでいるときはわからなかったのですが、この本は『君たちはどう生きるか』のオマージュ作品になってます。
コペル君と残された自然を中心に語られる「大多数の中の個人とそれぞれの関係性」は、僕にとってとても興味のあるテーマでした。特にこの言葉が印象に残ってます。
たった一人きりになって、初めて純粋に、僕はどう考えるのか、これからどう生きるのか、って考えられるようになった。そしたら、次に、じゃあ、僕たちは、って考えられたんだ。
嫌われる勇気
『君たちはどう生きるか』は、主人公であるコペル君とおじさんのやりとりが中心になってます。これは去年の個人的ナンバーワン本である『嫌われる勇気』にすごく似ています。
両方とも哲学の話です。哲学とはいっても、とても身近にあるテーマである「人間関係」や「なぜ生きるのか?」がとても上手に語られている本です。面白くないわけがない。
君たちはどう生きるか
本書ではさまざまな事柄が、主人公であるコペル君を通して描かれています。たとえば、はじめにコペル君は世の中の人と人とのつながりを考え、めまいを覚えてしまいます。
「一は全、全は一」。コペル君の発見を読んで、『鋼の錬金術師』を思い出しました。
それ以外にも、真の英雄とは何か? 貧しさとは何か? ニュートンはなぜリンゴの落下を見て万有引力を思いついたのか? といった、わくわくする出来事がコペル君を待ち受けています。そして、とてもつらい出来事も。
著者の吉野源三郎さんは昭和を代表とする知識人だそうです(Wikipediaより)。尊敬する方が倒れられ、代わりのこの本の執筆をした経緯などがあとがきに書かれており、苦心して作られた作品であることが伝わってきます。
そして、その吉野氏の力強いメッセージは、何年たっても色あせません。36歳になった僕のようなおじさんでも、この本を読み終え、ふと「さて、どう生きていこうか」と考えてしまいました。
ぜひ、自分の娘にも読んでほしいと思う本です。そして、聞いてみたい。「君はどう思った?」