5年後に主役になる働き方「アグリゲーター」

アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方 柴沼俊一 瀬川明秀

数年後という近い将来が語られた『知られざる職種アグリゲーター 5年後に主役になる働き方』を読み終えました。身近に感じていた言葉にできないモヤモヤした感じを説明してもらったようで、最後まで楽しく読めました。

優秀な人が辞めてしまう理由

なかでも面白かったのは「優秀な人が辞めてしまう理由」について。著者は単純に3つのタイプに人間を分けて説明しています。

ひとつは、独立した個人。だいたいこの人が1割ぐらいいる。彼らは組織に所属しなくても生きていける力を持っているので、環境に満足できないとすぐに辞めてしまう。

もうひとつは、今までどおりの仕事をして食べていける人。進化をしなかったとしても3割ぐらいは生き残る見通し。

のこりの6割が「自立した個人」。多分、この個人たちが一番身近なモデルで、所属する会社組織や社会をうまく活用して生きていく人たち。著者いわく「自分で持てない部分はその会社や社会から提供を受ける」という生き方です。

ただ、やっぱり力のある独立した個人を企業は確保したいはず。だとすれば、どういった環境を提供すれば彼らにとって魅力的に映るのでしょうか?

新しい組織の形

著者は人財を惹きつける組織を「この組織で働いていると、はるかに大きな価値を効率的に創りだすことができて、自らの成長に資すると思える環境」と述べています。

たとえば、これまでの組織は「ニュートン型組織」でした。上から下にリンゴは落ちるように情報が流れるタイプです。利益志向、安定重視、プロセスを厳守、社員は「人材」、会社の発展=会社の業績という考え方です。

しかし、これからは「ダーウィン型組織」も考えていく必要があります。これはアメーバのように進化する組織で、目的志向、継続的進化を重視、トライ&エラーを奨励、社員は「人財」会社の発展=社員の成長という考え方です。

大きな違いは人を材料と考えるか財産と考えるかでしょう。生産性を上げればうまくいくはず、ではなく、財産を活用して価値を高めるというもの。きっと、いきなりこれができる企業は少ないでしょう。

また、企業の風土に合わせた人財ばかり集めるのではなく、多様性が求められると考えられます。たしかに、組織の風土は「あとで」できるもの。先にそれがあるとおかしくなってしまうのでしょうね。

自分自身の再定義

こういった変化の中、個人に求められるとされるのが「自分自身の再定義」です。本書の言葉を引用すると以下の様なものです。

自分の仕事は本当にピンづくりのプロセスの一つを担うことなのかと自問し、自らの考えるあるべき姿に近づくべく行動を起こすまでの思考が、個人による「自己の再定義」である。

大切なのが以下の3つ。

  • ビジョン・・・思い。社会でどう記憶されるかということ
  • 能力・・・成果を生み出す力
  • キャリア・・・能力を獲得していく上での手段

「もうやることないかな」と思った時は、一度考えなおしてみるといいかもしれません。もしかしたら、今見えている世界や組織だけわかったのかもしれませんから。

立ち止まりそうになった時ほど、前進すること、進化することへのパッションが必要だ。

たしかに、情熱を超える原動力はなかなかない。これは5年先でも変わらないことなのでしょう。