『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』を支える企業たち

ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞2014のプレゼントでいただいた『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』を読み終えました。クリス・アンダーソン氏の本はいくつか読んだことがありますが、これが一番面白かったです。

今日でもアメリカ経済の四分の一は、ものを作ることで成り立っている。それに流通と小売の売上を加えれば、経済全体のおよそ七五%にもなる。(中略)マスコミはソフトウェアと情報産業ばかりに注目するが、そこから生まれる雇用は人口のほんの数パーセントにすぎない。 ― 第2章「新産業革命」より

そうなんですよね。この製造が占める割合はとても大きく、僕がいるソフトウェアの業界なんてまだちっぽけなものです。その巨大な産業に革命が訪れようとしているというのは、世界がひっくり返るぐらいのインパクトなのでしょう。

彼らはビットを作り出し、委託工場がアトムを製造する ― 第8章「巨大産業を作り替える」

メイカー企業は産業を作り替えています。Squareのような小さなモノとソフトウェアがくっついたサービスが、これまでのクレジットカード決済を変えたり、

それは、究極の「ジャスト・イン・タイム」プロセスだ。必要なものを必要なときに作ることができるのだ。― 第8章「巨大産業を作り替える」

巨大なサプライチェーンに巻き込まれることなく、自分たちでパーツを生産することで「生産単位は1台」という究極の工場がすでに存在しているわけです。また、様々なサービスを提供する次のような企業があります。

MAKERSを支える企業たち

Kickstarter

Kickstarter。なんちゃって銀行。投資してほしい人がアイデアを掲載し、資金を集めるサイト。「お金があればこんなの作るんだけどなぁ」という気軽さと、ゲーム感覚の投資が面白そう。

Quirky

Quirky。お金の賭かった人気投票。Kickstarterがお金を集めるプラットフォームだとすれば、こちらはアイデアを競い合うプラットフォームでしょうか。コミュニティのようななかでアイデアを出し合い、磨き合い商品を作っていくようです。

Etsy

Etsy。ハンドメイド製品を売買できるサイト。今もあるかわからないけど、透明なコインロッカーみたいなところに自分が作ったプロダクトを置いて販売するサービスを思い出しました。Webだと場所も時間も言葉も乗り越えていきそう。「ハンドメイド」に特化したのがメイカー時代にマッチしそうです。

さらに、クラウドファクトリーと呼ばれる企業も登場。

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MFG.com。世界中のサプライヤーとつないでくれるマーケットプレイス。「中国の工場に飛ぶ」みたいなバイヤーの仕事が変わっていくんですかね。

アリババ

アリババ。サプライヤーとしてのアリババってのは考えなかったんですが、完成した製品より部品のほうが強そうです。

Ponoko

Ponoko。3Dプリンタやレーザーカットを依頼できて、作った部品も売れるサイト。

shapeways

shapeways。こちらも3Dプリンティングのマーケットプレイス。自分用に作ったものが世界中に広がるってステキね。

製造業の未来

ラップトップとクレジットカードがあれば、それだけで起業できる。 ― 第2章「新産業革命」より

さらに

ロボットが製造できる製品なら、人件費の安い場所に移動するメリットはしだいに失われていくし、そうした製品はますます増えている ― エピローグ「製造業の未来」

今はまさにそういう時代です。ただ、エピローグにはこうも書かれています。

参入障壁が低く、イノベーションは速く、起業家精神の高いモデルだ。これが未来の製造業の姿なのだろうか?それとも、未来の製造業は現在のウェブにより近い形になるのだろうか?つまり、商売っけがなく、まったく儲ける気のない素人がコンテンツの大半を作る世界に? ― エピローグ「製造業の未来」より

参入障壁が低い影響で「素人がコンテンツの大半を作る世界」が生まれる。この逆説的な表現はとても考えさせられるものです。

しかし、その素人と呼ばれる人の中には成功をおさめる人もいるわけで、新大陸を目指す大航海時代のように、プロ・アマを問わない競争社会になっていくのでしょうか。

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』は、未来に期待が膨らむとともに、激しい変化への恐怖を強く感じました。