赤十字救急法 基礎講習と救急員養成講習を受けてきた

子どもが生まれたときに上級救命講習を受けたけど、登山を始めたり、子どもが小さい頃とはまた違った怪我をする可能性が増えたので、あらためて人を助ける方法を学んできた。今回お世話になったのは赤十字の救急法「基礎講習」と「救急員養成講習」だ。

メメント・モリ

少し前に山岳会に入ったことがある。参加者は悠々自適なご高齢の方ばかりで、山行の日程は合わないし(平日東北行くぞー!とか社会人には難しい)、歩くスピードが合わなかった(遅いスピードに合わせると逆に疲れてしまう)ので、すぐやめてしまった。

その山岳会では、新しい参加者に向けて実技トレーニングを行っている。参加者は毎月増えるので、毎月丹沢方面に繰り出し、簡単な山行を通して、体力や基本動作の確認を行うのだ。

参加者は時間に余裕のある方々が多く、高価な装備に身にまとう余裕のある人が多い印象だった。「昔、山をやっていたんですが、リタイヤして時間ができたので、またはじめようとおもって」のような声がちらほら聞こえてきた。

実技トレーニングは丹沢の塔ノ岳コースを使う。関東だとかなり有名なコースで、通称バカ尾根と呼ばれるバカみたいに続く尾根がトレーニングにはぴったりな場所だ。トレーニングでは塔ノ岳手前で折り返すが、なかなか骨のあるコースなので、肩で息をする人も多かった。昼ご飯を食べながら「昔はこんなの簡単だったけどなぁ」という声が聞こえた。

帰り道、少し進んだところで、「昔は」と話していた人が急に胸を抑えてひっくり返った。すでに意識も呼吸もなく、そのときは想像もしなかったが、ここから1時間半以上にもわたる心拍マッサージがはじまる。

山小屋まで往復1時間。ふもとまで往復2時間。電波は通じない。人通りは多いほうだが、今必要なものは人手じゃない。

この状況で自分には何ができたのだろうか? それを学ぶために改めて講習を受けることにした。

講習

講習は日本赤十字の神奈川県支部で開催された。神奈川県の講習は神奈川県支部のページで随時募集している。今回の開催は、神奈川県山岳赤十字奉仕団、日本山岳会神奈川支部のみなさん。参加者もアウトドアグッズに身を包む人が多く、さすがみなさん足取りもしっかりしている。

基礎講習は心肺蘇生とAEDの使い方を中心に学び、救急員養成講習は三角巾を使った怪我の手当、搬送などを学ぶ。基礎講習だけなら半日ぐらいの講習で、救急員養成講習だと2.5日とかなりしっかり学ぶ。ただ、これでも時間が少ないぐらいで、急ぎ足でテキストを学び、実技を繰り返しやって学びを深める形になっている。

講習後は、簡単なテストと実技があり、それをクリアしたら受講証を貰える。

心肺蘇生は繰り返しやらないと身につかない。思った以上にやる方の負担も大きく、成人男性でも1分やり続けると息が上がる。

AEDの練習は家ではなかなかできないのでとても勉強になる。

都内だと10分ぐらいで救急車が来る。心配が停止している場合、1分以内に救命処置が行われれば95%が助かり、3分だと75%、5分すぎると25%まで下がる。つまり、救急車を待っているだけでは遅いし、AEDを探すにも5分以上かかってしまうのは厳しいのだ。

登山道などでは更に過酷になる。ヘリコプターで救助を求めても最低1時間は待たなければならない。登山道が木々に覆われていたら、救助できる広間を探すか、近くの木々を伐採する必要もある。

なによりも登山道にAEDはない。

登山道のように人通りが少ないケース、または、自分ひとりで遭遇したケースだと判断が難しい。いくつか質問して分かったのは、

  1. まず、自分の身を守ること。日没が近いなど状況に応じては山を下る選択も必要になる。
  2. 通常なら119番優先 > AED > 心拍蘇生の順だが、登山道の場合は119番優先 > 心拍蘇生になる。電波が届かないなら届くところまで安全に動く必要がある。一人の場合、その場にメモを残しておくなど、のちの発見者との連携も必要になる。
  3. もし、すぐに人が来そうな道なら心肺蘇生をはじめてもよい。ただし、医者ではない限り医療行為や診断はできない。つまり、我々にできることは、救助が来るまでずっと心拍蘇生をするだけだ。そのために、通りすがりの登山者にも助けを求め、できるだけ継続的に心肺蘇生し続ける体制を築く必要がある。

あたりだろうか。とてもタフな状況ではあるが、事前に整理できた分、少しだけだが気持ちは楽になる。

救急法の講習は、誰もが救命に参加できることを学べる。人間は、人間を救うことができる。

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