今風でモダンでイケてる令和版インセプションデッキを作ってみた

昨日、インセプションデッキの解説を翻訳したのですが、令和にもなったので今風なインセプションデッキのテンプレートを作ってみました。

きっかけ

登場してから10年以上経ち、市民権を得たインセプションデッキですが、「書き方がよくわからない」という相談が結構多く、一緒に作成していると「ちょっとこれはわかりにくいかもなぁ」とか「ちょっとこれは今の現場に合わないなぁ」と感じることもしばしば。

そこで、内容を整理して、今風にしてみたのが今回紹介する令和版インセプションデッキです。デッキはGoogleスライドで公開していますNotion版はこちら)。

アジャイルサムライ』だと、「第4章 全体像を捉える」、『第5章 具現化させる』にわけて分類されていますが、ここでは、

  • プロダクトの意義を考える質問
  • 短期的なゴールを考える質問
  • チームの方向性を考える質問

の3つに分類しました。最後の「チームの方向性を考える質問」については、インセプションデッキがチームのオンボーディングになることを狙って追加しています(ここのスライドが一番増えています)。

内容は、実際に使ったり、使ってくれた人のフィードバックを得ながら改善していこうと思っています。

以下、スライドになります。この記事を見ながら作れるように解説していきます。

プロダクトの意義を考える質問

1. チーム名は何か?

インセプションデッキの表紙として追加したスライドです。自分たちに名前をつけましょう。表紙には大きく、クールな響きを持つチーム名を記載します。自分の子供に名前をつけると思ってつけると、親近感わくはずです。

バージョンや更新情報を簡単に書いておくと、過去の経緯を理解できるようになります。インセプションデッキは開発の大きな区切り、メンバーの増減、四半期や半期といったタイミングで見直すと良いです。

2. われわれはなぜここにいるのか?

プロダクトやチームに会社が投資する理由をすべて書き出します。すべて書き出した後に、もっとも重要なものをひとつ選びましょう。

「なぜ(Why)」は動機づけです。動機が明確になり、動機をもとに的確な意思決定したり、新しいアイデアを考えられるようになります。

また、「なぜ(Why)」はチームやプロダクトの存在理由です。存在理由はコアな情報です。もっともコアな情報を判断材料に加えられます。

「実はこう思っていた」とかは「なし」にしましょう。

3. エレベーターピッチ

緑の文字部分を書き換えます。それ以外の文も自然な言葉になるように修正します。

サンプルも以下に書いておきます。

[建設現場のトラック専用道路にアクセスが必要な個々の建設チーム] 向けの、
[ロードクロージャーシステム(通称RCS)] は、
[道路が閉鎖されたときに作業員に通知] できる
[安全なコミュニケーションツール] です。
[現在の紙ベースのシステム] とは異なり、
われわれのプロダクトは [Webベースなので、すべての契約者はいつでもどこでもアクセス] が可能になります。

エレベーターピッチによって「何(プロダクトそのもの、What)」が明確になります。「われわれはなぜここにいるのか?」と同じように、自分たちのやっている「こと」や自分たちの顧客、プロダクトの特性が明らかになります。

ここにまとめられたものは、すべて「とても」重要な情報です。しかし、重要なあまり、書きすぎるとわかりにくくなります。あくまでシンプルに。

4. とりまくプロジェクトコミュニティ

プロジェクト期間中、何らかの形で関わりを持つ人たちをリストアップします。

どのコミュニティとどういう関係性があり、どういうやりとりが発生するかをまとめます。まとめるだけでなく、関係性を良くするために、誰が、いつまでに、何をやるかも整理しておくと良いです。

このスライドの目的は、これらの人たちと関係を早期に築きはじめ、彼らがこちらに気がつく前に、こちらから歩み寄ることです

短期的なゴールを考える質問

5.ざっくりリリース計画

追加したスライドです。インセプションデッキは、スプリント開始前に作られるケースが多いので、ここではリリースレベルの計画を「ざっくり」用意しておきます。細かい計画づくりはスプリント計画のタイミングを使います。

このスライドは細かい道のりを表してくれませんが、だいたいの方向を指し示す地図になります。

6. やらないことリスト

やること、やらないことをリストアップします。保留中のものはプロジェクト前にかならず「やる」、「やらない」を決めましょう(『アジャイルサムライ』だと「いつか決める」になってますが、「いつまでも決まらない」になりがちなのですぐ決めちゃいましょう)。

やらないことを選ぶことで、本質的にやるべきことが明確になるはずです。あれもこれもやることリストにあるなら、「半分をやらないにできないか?」を考えてみてください。

7. 技術的な解決策

このスライドは、チームがどのように構築するかを知らせるものです。想定しているツールやライブラリなどをここにリストアップします。アプリケーション・アーキテクチャの中で、リスクの高い部分があればそれも強調しましょう。

この方法によって、解決策から技術的な課題を洗い出せます。解決策としたライブラリや言語、アーキテクチャが適切かどうか? チーム内で合意が取れているか? リスクがどれぐらいあるか?を話し合えます。もし、アイデアがない場合は、正直に白状しましょう。あとで話すよりも、今話しておいたほうがいい方向に進みます。

初期プロジェクトではない場合、このスライドをスキップすることが多いです。

8. 夜も眠れなくなる問題

今現在、気になることや不安を指摘し、ステークホルダー、スポンサーやチームと率直に話し合うためのスライドです。まずはぜんぶを洗い出し、そのなかで「ものすごい問題や不安」を選びぬきます。

不安を洗い出すだけでなく、洗い出した問題を解決するために必要なアクションを考えるチャンスでもあります。すべての願いが叶わないかもしれませんが、まずは要求してみるのが手です。願いが叶わなくとも、これからのためにその理由を残しておくとよいでしょう。

9. トレードオフランキング

スライダーはわかりにくいのでランキング形式にしました。また、品質は最近トレードオフ対象じゃなくなってきたようなので削除しました。アジャイルチームは人件費と追加型で予算を考えるケースが多いので、予算もなくてもいいかもしれません。予算というより売上とかのほうがいいのかも?

このスライドによって、ピンチのときに何を諦めるかがはっきりします。

チームの方向性を考える質問

10. チームのあるべき姿

追加したスライドです。チームとしての方向性を考えるため、チームのテーマをここに書きます。

どういったチームになりたいか? どういったチームで働きたいか? メンバーはどうふるまるべきか? など、自分たちがアジャイル開発で実現したいものを書いてみるといいと思います。

まよったときは「自律したチーム」としてみてください。このテーマは奥が深いので、自立するためのいろいろアイデアが浮かぶはずです。

11. チームメンバーへの期待

追加した質問です。もともとのインセプションデッキだと、「何がどれだけ必要か」に位置するものになります。

このプロジェクトを成功させるために、誰が必要で、どのようなスキルが必要なのかをまとめます。特定の人物が重要な場合は、バイネームで書き込みます。

もし、すでにチームが組成されている場合は、それぞれの能力や相手に期待することを出し合えば、相互理解につながります。

見積もりについては、あんまりこういう見積もりをしないため、おまけとして書いておきましたがなくてもいいと思います。

12. チームイベントを決める

追加したスライドです。このあたりはより具体的な仕事の進め方になります。スクラムイベントなどをここにまとめておきます。

イベントと同時に、そのイベントの意図も明示しましょう。アジャイルチーム以外の人にとっては、「スプリントレビュー? なにそれ?」です。どういった意味を持たせ運用したのかを説明するチャンスです。

タスク管理方法やドキュメント置き場などのルールもここに書いておいてもいいかもです。

13. 開発環境と開発サイクル

追加したスライドです、開発の流れをまとめます。図で書いてもわかりやすいかもしれませんが、頑張りすぎると辛いのであくまでシンプルにです。

14. 技術プラクティス

技術プラクティスは何かと疎かになりやすいので、インセプションデッキに取り組むプラクティスを書き出しておくといいと思います。担当と期限をきめて、バックログに積んでおきましょう。

インセプションデッキをリニューアルしてみました。削除したスライドは以下です。

  • プロダクトボックス: 内容がエレベーターピッチとかぶりやすい
  • 期間を見極める: リリース計画を代替にした
  • 何がどれだけ必要か: チームメンバーへの期待を代替にした

僕はインセプションデッキに、チームの情報をまとめておき、オンボーディングで使える状態にしたいのでこうなりました。

Udemyでも解説しているのであわせてどうぞ。

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