ちょうど去年末にIIT(作中ICEとよばれていた大学)に採用で行くことになった。そのときに現地に行くメンバーの間で話題になったのがこの作品。今見ると、何かと感慨深いものがある。
IITはインドの工科大学で、インド内にたしか10以上のキャンパスがある。自分はデリーから3時間はなれたルールキーキャンパスに向かったが、そこはスタンフォードなどを参考に建てられたらしく、整然と並ぶ校舎を見ると、インドのイメージとはちょっとはずれた感覚を感じる場所だった。
ちょうどそのひと月ほど前にイベントがあり、学生たちと過ごす時間があった。成績を見ると超エリート。勉強ができる子ばかり。でも、話してみると、彼らも普通の若者だった。
IITは学校主催で企業を誘致し、学内で就職活動イベントを行う。IITとなるとインドでは最高レベルのエンジニアリング大学。GoogleやFacebookなど名だたる企業が優秀な学生を狙っており、新聞の一面に「XXキャンパスで1000万オファーが出た!」などと掲載されるぐらいの過熱ぶりだ。
普段はラフな格好でサンダルを履いて学内を歩く学生も、このイベントでは似合わないスーツを着て緊張した面持ちだ。でも、彼らは普通の若者なのである。
「きっと、うまくいく」では、怖い学長をシンボルにして、エリート教育の問題点をうまく描いている。優秀な学生が集った結果、落第者は自殺という最悪の選択をしてしまうのもきっと嘘ではないのだろう。
その中で、この三人は映画の原題「3 Idiots(3人のバカ)」のとおり、お馬鹿な生活を繰り広げながら、学生生活を通して友情を育んでいく、そして、中心人物であるランチョーに感化され、それぞれの道へと歩いて行く。
名だたる企業に就職するのが全てではないだろう。一昔前では違ったかもしれないが、今の日本だと、そんなものより大切なものがある人が多いと思う。でも、「人生はレース」はあながち間違いではない。敗者は明日の我が身であり、弱者は作中の若者のように「俺は降りる」しかないのも事実として存在するだろう。
この映画を見終わって、ある学生が頭に浮かんだ。彼は学力が足りず、企業の面接に呼ばれず、就職活動先が見つからないようだった。ルールキーキャンパスの学生だったので、たまたま会って話をしたが、その最後に「僕もあなたの会社の面接を受けられないだろうか?」と懇願するような目で話してきた。
「それは無理だ」
映画の学長のように、そう言えばよかったのだろうか。僕もランチョーのように、勇気の出る言葉を彼にかけられればよかったのに。
「自分の人生を自分で決めるということ」
それは、わかってはいてもとても難しいことなのだなとあらためて感じた。
「きっと、うまくいく」はプライムビデオで見れた。いい映画は隠れているけど見つけにくいのでがんばってAmazon!
リンク: きっと、うまくいく(字幕版)