
11月に二週連続で大規模なイベントの運営に携わることができました。
一つは『楽天テクノロジーカンファレンス2011』で、もう一つは『WordCamp Tokyo 2011』です。当時の思い出は、こことここに書いたのですが、合計参加者1000人以上というイベントを経験できたので、ノウハウを残すためにふりかえりをしてみようと思います。
イベントとコミュニティの関係といった、より詳細なイベント運営論については、WordCamp Tokyoで50人ものスタッフ運営をとりまとめた@shinichinさんの”WordCampTokyoの運営もオープンソースにする via Shinichi Nishikawa’s blog ”を読むことをオススメします。
プログラムについて
「テーマ」はすごく重要だと思いました。お招きする講演者に向けて、発表を依頼する際に、テーマがあったほうが全体としてまとまりのあるプログラム構成になります。この場合、テーマに興味のあるユーザのみが集まる傾向にありますので、募集人数にそくしたテーマづくりが大切になるでしょう。
逆に、テーマなしのごった煮なプログラムを目指す方向性もあります。メリットとしては参加者に新しい興味に対する発見が生まれる傾向があり、デメリットとしては、「何を聞いたらいいかわからない」というコメントも出てきます。
並行するセッション数も考慮する必要があります。海外の大規模イベントAile 2011 Conferenceの場合は、20ぐらいのステージが並行に走り、5日間イベントが開催されますが、多すぎる影響で、セッションを選ぶのが大変なんですよね。逆に1ラインでプログラムを組むと、人の入れ替えがくっきり出てしまい、ぎゅうぎゅう、がらがらといった現象が生まれてしまうので、1000人までのイベントであれば、3~4つぐらいの並行ラインが経験上良い気がしています。
あとは、参加者にやさしいイベントにするため、ステージごとにテーマをわけたり、「エンジニア向け」といった参加者層を伝えたり、「上級者向け」のようにスキルで分けたりするのは効果的だと思います。
プログラムはイベントの背骨みたいなものなので、最後までしっかり練るべきです。一番時間をかけていいところのように思います。そして、最近だとTwitterなどで情報発信が可能なので、プログラムをがっちり確定してから公開するのではなく、確定した時点で、インクリメンタルに情報を流していくと集客につながります。
開催場所について
個人的には、XP祭りの早稲田大学のキャンパスや、Agile Conference Tokyoの開催場所だった文化ホールとかがおすすめだと思います。なぜなら、
- 会社内に入れるより入退場のセキュリティチェックが楽
- 大人数収容目的で作られた建物だから(トイレの数や通路の広さなど)、人の誘導などがしやすい
- お値段が安い
からです。

WordCamp Tokyoや楽天テクノロジーカンファレンスは、楽天のイベントルームで開催されたのですが、「企業の部屋」とかだと、そこにはそこのルールがあるので、きちんと確認をしておく必要があります。とくに、セキュリティの問題が出てしまうと、今後の場所提供や、会社存続の問題にまでなってしまう可能性があるので、十分注意をはらう必要があります。
ブログを書いているうちに、ちょっと気になったので、有名な会場の平日利用の値段も調べてみました。
- ホール 5012席 3,549,000円
- ホール 1502席 1,165,500円
- 展示ホール 5000m2 7,350,000円
- 地上広場 約850m2 441,000円
- 横浜スタジアム
- 料金非公開だけど草野球で先輩が借りてたから安いはず。ブルペンに入れるという特典が熱い
- 幕張メッセ
- 国際展示場ホール1~8 54,000m2 17,552,000円
- 国際展示場ホール9 9,000m2 2,926,000円
- イベントホール 9000人 1,890,000円
- 東京ドーム
- 1,942,500円
- スタンド、オーロラビジョン利用は別料金
一見高そうですが、参加費数百円で集客すればお釣りが取れる感じ。9000人収容可能とか熱いなぁ。あとは、やりたいことにあわせて調整するだけなので、会場準備として
- 現地視察
- プロジェクタ&スクリーン、ネットワーク機材など必要なモノ調達
- 「やれること」「やれないこと」の整理
を洗い出し、早めに消化しておくのが吉です。立入禁止、トイレはこちら、ステージはこちらといった紙は少し多めに印刷しておき、マスキングテープを3~4個買っておけば、ペタペタ壁に貼ることができます。
ランチ・懇親会
お昼のドリンクは、一人一本計算で、当日参加予定者数あれば十分でした。スタッフの分で微調整することができます。
懇親会については、居酒屋を予約するパターンもありますが、今回はケータリングなどでがんばるパターンについてまとめますいろんな人から教えてもらったネタとして
- ビール(350ml)は一人1.5本計算。ただし、人数が増えると、飲む本数が減る傾向にあるらしい
- 食事は少なめにして会話を楽しんでもらえる企画を考えたほうがいい
というのがあります。自分の場合は、20%ソフトドリンク計算を入れるんですが、ビールもソフトドリンクもどちらも大抵あまりました。そういうときは、お見送り時におみやげとして配ることが多いです。イベントだと、黒字でも赤字でも困るんですよね。
カクヤスさんを使った搬入の場合は、搬入の便数が決まっているそうで「○時に来て!」という指定ができません。冷蔵したものを持ってきてもらう場合は、開始1時間前ぐらいを目処に持ってきてもらい、箱を開けず、ケースを固めて置いておけば、冷えたビールを楽しむことができます。
食べ物については、楽天デリバリーコンシェルジュのようなサービスがあるので、そこで人数分を注文が楽です。注文時に
- サポートスタッフはついてくるか?
- ゴミを持って帰ってくれるか?
を確認しましょう。生ゴミは処分が面倒くさいことが多いので、処理の仕方も忘れないように確認しましょう。
誘導や当日受付
受付を制する者はイベントを制する。とまでは言いませんが、ここでのオペレーションがとても重要になってきます。ポイントとしては
- 受付がボトルネックになるのを防ぐために、あまり多くの作業を入れない
- 受付がボトルネックになるのを防ぐために、名前の突き合わせチェックなどは極力しない
- 受付後の人で混雑しないように、受付場所とエレベータの間にゆとりをもたせる
- 受付した人数をカウントしておき、定期的に全体に伝える
- 忘れ物は受付に集約する
などがあります。いかに効率よく、スムーズに会場に行ってもらうかがポイントなので、箇条書きのマニュアルを作るなど、コストをかける部分だと思います。
誘導については、昔、4人で400人誘導できたので、一人100人計算で誘導はできる気がします。心配な場合は、参加者が困ったときに、ぱっと見渡してスタッフが見つかる程度に配置するぐらいがちょうどよいと思います。あとは、入場時、退場時や休憩時間などに、人を集め、終わったら解散するシフトを組むと、スマートに運営ができます。誘導は選択と集中。成功は担当者の采配にかかる部分です。
公式Webサイト
WordCamp Tokyo 2011の公式Webサイトでは、55のエントリーが投稿されています。9末が初エントリーになっているので、実質2ヶ月ぐらいの期間。平均すると1日1エントリー(ただし直前の案内が多くなってしまうんですが)です。こういった定期的なUpdateをすると、参加者やスタッフのテンションも上がってきます。
さらに、@wctokyoによるつぶやきや、Facebookページも大活躍しました。Facebookページは500を超える「いいね」をいただき、コメントのやり取りも活発になりました。
- ブログによって、かっちりした情報を提供
- Facebookページで、イベントが近づいている感や、盛り上がり感を提供
- Twitterで、インスタントな情報を提供
というように、ソーシャルメディアをからめてのプロモーションは、もう必須といえるのかもしれません。
スタッフの運営
WordCamp Tokyoでは、たくさんのWebサービスを使ってコミュニケーションをとりました。
- Google+のHangoutや、Skypeを使ったTV会議
- ディスカッションにFacebookグループ
- タスク管理にBacklog
- ドキュメント管理にGoolge Document
- たまにオフラインMTGや飲み会
Webでつながればなんでもできちゃう時代なんだなぁと改めて思いました。ただ、あって話すほうが早い場合があるので、オフラインも重要だと思います。ツールに使われるようにならない程度に、便利なツールを使うべきです。
役立つ道具
これまでにいくつかイベントをやってきて必要になったマストアイテムはこちらです。
- ウエストバッグ的な何か
- 太字の水性ペン。ポスカとか
- マスキングテープ。張り紙だけでなく、「ここから入らないで!」のテープにもなる
- A4のコピー用紙10枚ぐらい
- プログラムを印刷したもの
とくにマスキングテープは無敵です。
今後の課題点
会場や懇親会で、参加者同士のコミュニケーションを促進させる方法は、いつも悩むところです。WordCamp Tokyo 2011を終えて via カイ士伝の「名札コーナー」のような企画は、ポイントになってくるんだろうと思います。講演者とコミュニケーションを取る方法としては、デベロッパーズサミット2011の「アスク・ザ・スピーカーブース」のような、「講演者は公演後ここにいます!」といったブースを作るのもいいなぁと思います。
あとは、勉強会のようなイベントは、効率的なやりとりからよりも、非効率なやりとり(言い方は悪いかもしれないけど)からいいアイデアが生まれることが多かったように思います。
例えば、コンテンツ検討ディスカッションをする場合、「意見を出し合う => ぶつかる =>調整する」を繰り返すのだと思うのですが、この作業自体が効率が悪いです。そこで、「困ったらトップダウンで決める」というような効率化をすると、スタッフのモチベーションが下がっちゃう。自分の結論としては、
- 誰がやっても同じ結果になるような調整作業は効率よく
- やりかたによって出来が変わってくる作業は効率を求めないでコミュニケーションを求める
のがいいんじゃないかなぁと思いました。
まとめ
今回、僕自身が学んだのは、2週連続でイベントを開催するのは、肉体的にも精神的にも大変ということでした。もうこんな無茶しない。そして、そういった状況の時に限って人間は、前夜祭で体力を使いきろうとする傾向にあります。でも、こんなときってビールがすごくおいしいんですよね。なんでだろう。
また、スタッフが高いモチベーションを持っているという点が、イベント成功の鍵を握るのは間違いないです。スタッフ全員がそうなるのは難しいかもしれないけど、モチベーションが高い人は、多ければ多いほどいいです。
あとは、こういったノウハウは、結構いろんな人が持っている気がするので、どこかにまとまっているといいなぁと思いました。
以上、つらつらと書きなぐってしまいましたが、参加するだけでは見ることができない面白い世界がそこにはあるので、興味があれば、勉強会などを開催してみるのをオススメします。
勉強会はスタッフの情熱によって支えられている気がします。