フリートドライバーとしてオリンピックボランティアに参加してきたよ

大会関係者(各国のオリンピック委員など)を送迎するフリートドライバーとして、オリンピックボランティアに参加してきました。初日は散々でしたが、だんだんボランティアというものがわかってきた気がします。

フリートドライバーオフィス

我がフリートドライバーオフィスは、選手村の横にありました。「晴海休憩所」という文字が残っているように、倉庫街の休憩施設を使っているようです。最後には男子用トイレは30%ぐらいが「使用不可!」になっているぐらいボロボロでしたが、合計9回参加していくと、だんだん愛着が湧くものです。

あとで聞いた情報によると、同じボランティアのツワモノマダムがいるらしく、配車や担当まで仕切っていたそうです。だから、中のいい人は毎日仕事があり、それ以外は運が良ければ・・・みたいになっていたとか。

ありがとう、3密オフィス。ありがとう村社会。くたばれ!

オフィスはその他2箇所あり、選手村に一番近い場所はプレハブ小屋。もう一つはなんとテントです!テントです(大事なので2回言います)!

炎天下の中、このテントで待ち続けるのなんてざら。はじめにテントに来たときは「4時間ぐらい待って、来なかったら帰っていいよ」といったやりとりをしている人がいました。

よっ 4時間だと・・・

ちょうど『ゴールデンカムイ』が全話無料配信されていたので、4時間はあっという間でしたが、ご年配の方も多いフリートドライバーなので、熱中症とか怖いですね。

愛車とナビと配車システム

運良く予約が入ればドライブに出発です。相方は全部プリウスでした。

決して運転しやすい車ではなかったのですが、このシフトレバーがめっちゃ使いにくかったです。ドライブが下で、バックが上ってのが直感的じゃなかったので間違えまくりました。

あえていいますがナビがクソです。検索しても出てこないし(「なりたくうこう」で調べてゼロ件っておい!)、右折するために左折3回させられます。なれてくると、「ははーんこの案内はダウトだな」と無視できるようになってきます。でも、「ナビからはずれると点数引かれる」みたいな都市伝説を語る人もちらほら。

何が正しいかなんて、答えはないさ

ラルクアンシエル 「DIVE TO BLUE」より

期間中高速を値上げしたのは、下道をゆずるためだったとかなんとかで、高速優先結果なので遠回りばかり。高速に乗るために高速に乗って降りるとか意味わからんよね。そりゃ事故が毎日20件とか起きるはずだ。

我らがトヨタがつくったという配車システムについては、ソフトウェア開発の仕事をしていて気がついたことをメモ。

本来は事前予約できるシステムになっており、乗客の行き先もIDをタッチするだけでナビに設定される仕様でした。しかし、自分の担当する車ではこのシステムが使えず、前に書いたように、ホワイトボードや紙に名前を書いて、電話がかかってきたらアサインされる仕組みです。

そもそも、各国の人たちは柔軟に配車をしたいのに、前日予約とかありえないでしょう。そうなると、「11時から23時までよりあえず予約!」とするインドやウクライナやエジプトみたいな国が出てきてしまい、システムが崩壊するのは当然。

駐車場所もQRコードで管理できるのに、ホワイトボードに「123番に停めました」と貼り付ける運用とか、「担当藤原、行き先 味の素スタジアム、出発時1000km、到着時1010km」とバインダーの紙に書き出す運用よか、おいこらGPSってしってるか?

たとえば、リオのフリートドライバーのマネジメント層にヒアリングするとかすれば、気がつける問題だと思うけど、欲しいものはこれじゃなかった感がとてもあり、ほとんどのフリートドライバーは電源すら入れないので、後半「電源入れて乗ってください!」とアナウンスが出ていました。

MovかSRideかUberのシステムを使えばよかったのに、オリンピックのための車輪の再発明だったのですかね。人間を豊かにしないソフトウェアか。罪深いな。

ドライブ

味の素スタジアム、東京アクアティクスセンター、都内や郊外のホテル、成田空港などなど、さまざまな場所をゲストと回りました。

スタジアムはどこも厳戒態勢。通常の入り口が閉鎖されており、ナビも対応できてないので路頭に迷いまくり。
選手村入り口。ここまではボランティアのIDで来れる。
各県の木材が使われているデザイン。
空が広い。右手に選手村の宿舎が並んでいる。
夜景もきれい。そういえば電柱が全然ないですね。
選手村横の駐車場。
奥の右端が日本選手団の棟。

初回からなんだかなぁなボランティア活動でしたが、「まぁ、それでも最後までやってみるか」とやってみて、なかなかできない経験にはなったと思います。

たとえば、オリンピックを身近に感じられたこと。開催についてはいろんな意見があると思いますが、がんばってきた選手や、それをささえる人たちのお手伝いがちょっとでもできたことや、各会場を車で訪れるたびに、オリンピックのすごさを肌で実感できました。

もし、世の中がこんな状況でなければ、東京の街にたくさんの人達があふれ、日本全体がお祭り騒ぎになっていたと思います。レスリングで4連覇した選手や、野球のアメリカチーム監督を見かけましたが、そういった人たちが、あるいはたくさんのメダリストが、いつもの街にいるってすごく特別です。

東京オリンピックでそんなカオスが実現できなかったのは、本当に残念でなりません。

ふたつめは、ボランティアについて考える時間があったこと。非効率で非生産的なボランティア活動になってしまいましたが、ボランティアにもいろいろあるのだなと学びました。

たとえば、フリートドライバーのシフトは前日夜遅くに流れてきますが「いくにんかから指摘を受けたので書きます」とか「運用がうまくいってないのと同時に、ボランティアのドタキャンもひどい」とか、メールの書き方が本当に下手くそ。火に油を注ぐ文章をだれもチェックしてこなかったところからは、書いた人の孤独を感じます。チェックしてこれなら、マネジメント層の能力のなさがあきらかでしょう。これじゃ伝わるものも伝わらないわね。

無駄なコミュニケーション摩擦を生んだり、善意のピープルリソースを非効率に消耗するのは、マネジメント能力の問題だと思います。それでも「だってそれがボランティアでしょ」と逃げる人もいるようですが、能力不足を棚に上げて正当化するのは、ボランティア精神の搾取に近いのではないでしょうか。

できないなら変わればいいし、困っているなら助けを求めればいい。自分を棚に上げて逆ギレして、それを「仲間だから」で守ろうとする人たちもいるのだなぁと学びました。それができないぐらい特殊な環境だったのかもしれません。

聞いた話だと「いつまで待たせるんだ!」と怒鳴った人がいたそうですが、その人は翌日から来なくなったそうです。退場しなければならなかったのは、(怒鳴るのは良くないけど)きちんとFBしたその人なんですかね? それとも、怒鳴られるようなことしているのに気がついていて何もできない人たちなんですかね?

最後は、4時間以上待てるスキルが身についたこと。インドで長時間車移動したときはずっとポケモンGOやってしのぎましたが、今回は昼寝とマンガでなんとかなりました。ありがとうゲームとマンガ。『はじめの一歩』も読み出してしまった・・・。

今月末にはパラリンピックがはじまります。次のボランティアは東京体育館付近でチームリーダーをする予定です。今度は会場なので、また違った学びがあるのかもなぁと楽しみです。