『1兆ドルコーチ』にはたくさんの言葉が詰まっているが、その中でも印象的だったのが、採用に関する言葉だった。その話をするまえに、こんな話をしよう。
過去の成功体験・経験を持った人たち
昔勤めていた会社で、他部署メンバーを交えたランチに参加した。企画した人は新しく入ったばかりの人で、新しい視点ならではの危機感を持っていた。彼は僕の部署の課題が自分の部署のものに似ていることに気がつき、メンバーも含めて僕との情報交換をしたいと思ったそうだ。
参加者のほとんどが新しい顔ぶれだった。ちょうど採用が強化されており、どんどん新しい人が入ってくる時期。その中に1人だけ、とても昔からいるメンバーがいた。
自己紹介が終わったが、どうも堅苦しい雰囲気だったので、課題をお互い正直に話せるように、こちらの課題のぶっちゃけトークをしてみた。「いやー、上司がクソでさ」「あのおっさん偉くなって、さらに何言ってるかわからなくなったよね」とかとか。
これで安心したのか、少しづつ感じている課題を話すようになってきた。そうそう、ランチとはいえど、基調な時間は大切に使わなきゃ。
ある女性はずっと今の課題を指摘続けた。僕も相手がはなしやすいように「ふんふん」「それでどう思ったんですか?」「そりゃひどいね」「どうすればいいんだろう?」と相づちをうち、彼女はどんどん話にのめり込んでいく。
しばらくして、彼女はハッと気がつき、最後にこう言った。そしてその後は一言も話さなかった。
「・・・いろいろ言いましたけど、昔からやってきた人に対して敬意は持ってます」
残念。もう遅い。
真のポテンシャル採用とは?
この話をきかっけに「中途の人が現状の課題や問題を責めちゃう問題について」を書いた。でも、本当に書きたかったことはなんか違うなぁと感じていた。
『1兆ドルコーチ』にこんな言葉がある。
人材採用は経験をもとにするのが一般的な傾向だ。だが、パフォーマンスの高いチームを築いて未来の基盤づくりをするには、経験だけでなく潜在能力をもとに採用することが欠かせない。
『1兆ドルコーチ』より
これを読んでこんなことを思った。
組織に課題があり、その課題を解決するために経験をもった人を採用する。その人はきっと、過去の経験を元に課題を解決する。環境が違うのでうまくいけばだけど。
しかしどうだろう。未来の組織の基盤づくりまでできるのだろうか?
もし、それができない人が集まってしまったら、いったいどんな組織になっていくのだろう 。
経験。インストールされていくそれは、大企業などのキラキラした経験かもしれない。しかし、それがインストールされることによって、どんどん大企業化していくかもしれない。
しばらくして、これまでクリエイティブな組織文化が、どんどん「ふつう」になっていくのを目の辺りにして、ポテンシャル採用の真の意味を考えるようになった。
『1兆ドルコーチ』。すごくおすすめな本です。