立川談春さんの自伝的エッセイ『赤めだか』。談志という超個性に入門し「修行とは矛盾に耐えること」という暗黙律の中、青春を落語に捧げた熱い物語。最後の章なんてずるい。電車で読んでて「ぐすん」ってなった。
悲しくも可笑しい人間模様
まず、登場人物が面白い。個性的な弟子や師匠たちは、主人公の目の前で恐ろしく躍動する。
喜怒哀楽。むちゃくちゃでありながら、なぜかそろうとこもあるのでまた面白い。
出会いもあれば別れもある。それぞれの出来事を、噺家たちは純粋に感じとる。芸の道に生きる彼らも人間であり、話を生み出す人間がすきなんだろうなぁ。
ブラック企業
修行なんていまの時代流行らない。そんなこともあるだろう。ただ、矛盾に耐えながら、修行と割り切って歩いていく彼らはかっこいい。
彼らの明るさを見ていると、物事の意味なんて、はじめる前にちゃんとわかるわけでもないし、一生懸命やることで、何かは確実に手に入るのではないかと思うのだ。
多分、感性や才能のある人物から学ぶのは難しくて、教える言葉なんて人間なんかには話せなくて、受けとる側でなんとかするしかないのかもしれない。
人と人、人間の全部
最後の章では、談春の師匠である談志と、そのまた師匠である柳家小さんの物語だ。
確執が生まれ、互いに別の道を歩いてきた二人が、談春がきっかけでまた近づいていく。正直にいうと、談春の文章を理解するのは難しかった。でも、なぜか読んでいて泣けてきた。
そして、読み終えたときに「人間の全部だ」って感じた。
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