「社会を変える」を仕事にする は泣ける本だ

藤原は30歳に近づくにつれて「いい世の中にしたい」と考えるようになった。
並行してオヤジが定年に近づくのも理由の一つだが、なによりも「ゆずちゃん」という友人の娘が「だいちゃん」と呼ぶまで成長したことが大きい。

子どもの未来は大切だ。その未来を自分が作るのだ。

そのために何ができるか考えたときに、「困ってる人がいたら迷わず助けること」を、まずはモットーにしようときめた。たまにできないときは自分の弱さを知ったりする。

「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方
「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方 駒崎弘樹英治出版 2007-11-06
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starユーモア溢れる若き社会企業化の本。現実に立ち向かう姿勢に学ぶところが多い
starすばらしい!
star悔しさを感じるほど。

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ソーシャルベンチャーという言葉は、去年の春ぐらいに「生きテク」という自殺という社会問題を考える活動をしている人から教えてもらって初めて知ったのだけれども、その理念には感心させられるものがたくさんあった。

ソーシャルベンチャーとは、事業性・自立性を強く意識したNPO。社会的ミッションを強く意識したビジネス。このどちらか、もしくはその組み合わせの形態をとることが考えられます。 by ETIC ソーシャルベンチャーセンターより

この『「社会を変える」を仕事にする』では、病児保育という問題に対する回答の一つとして、つらい思いをしながらでも前へすすもうとしている著者の記録が熱く書かれている。
熱いことが嫌がられる時代でありながら、この本を書いた著者の駒崎弘樹さんには敬意をもってありがとうと言いたい。
この本にはアンテナに引っかかった部分が4つあった。


一つ目は、ナイチンゲールの話。

駒崎さんのNPO法人フローレンスは、ナイチンゲールのファーストネームから取っている。駒崎さんいわく、ナイチンゲールは統計学のスペシャリストで、「戦闘で死ぬ兵士よりも、病気で死ぬ兵士のほうが多い」ことを証明し、軍を動かし死亡率をさげたという逸話を持っているらしい。

そして、その後の活動によって、統計学の専門家が、看護師という職業を社会的に認知させたというわけである。

ナイチンゲールは、意外にも「スタッフの自己犠牲のみに頼る援助活動は継続的ではない」とボランティア主体の活動には反対している。そう考えると、OSSとかの活動を会社に持ち込むのが難しいし、確かに継続しないなと納得できる。

二つ目は、コップの中の嵐という言葉。

限られた人間の限られた世界の中だけの議論のことを指すという。同じ考えを持った人間だけだと、新しい発想が生まれず、自分たちの世界以外の人間を巻き込めないという意味だ。今の仕事場はまさにそうだ。でも変わろうとしているはず。

三つ目は目的と手段の話。

目的のための手段が、いつの間にか手段が目的になってしまうことがある。

四つ目は環境依存型の生き方について。

会社にしがみつくリスクが高くなり、自分が何をしたいか?どんな社会を実現させたいか?の両方(両方をが重要)を考えることが重要な時代になってきているということ。

ほかにもたくさんあるのだけれど、気になった人はぜひこの本を読んで欲しい。企業家の成功例ではなく、企業家がかかえる悩みを知ると、それに共感できることに気がつくはずだ。

最後に、この本のエピローグをよんで、自分と同じようなことを考え実行している人がいることに感動した。その勇気には、深く深く敬意を表する。

僕もあなたと同じように、子供の寝顔を見て、世の中をよくしたいって思った。最後に泣けるビジネス本は初めてだな。