10年たった今見えてきたアジャイルに関する8つの問題提起

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Agile 2011 Conferenceに行ってきました。

たくさんのセッションに参加してきたのですが、その中でもカンファレンス二日目に参加した、Chet Hendrickson氏とRon Jeffries氏の「What We Have Learned So Far: what we got right & what we got wrong」が面白かったので、ここでまとめたいと思います。

内容はタイトルにあるように、「この10年で何を学び何を得たのか?そして何が正しくて、何が間違っていたのか?」というもの。アジャイルに関するたくさんのプラクティスやアイデアを共有してきた、Chet氏とRon氏が提起するアジャイルの注意点を確認してみましょう。

1. 独断主義という課題

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 アジャイルはしばしば独断主義としてとらえられてしまいます。常に改善を求められる雰囲気や、現実的なマネジメントの影響で「隠し事」が難しくなり、恐怖を感じるメンバーも現れる可能性があります。また、新しいメンバーはスルーする傾向があり、好きな人は好き!と二極化して対立してしまうこともしばしばあります。

2. 見積もりと計画づくりでの課題

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見積と計画づくりは開発を始めるにあたり重要な要素となります。重要であるがゆえに、ここでの課題は早急に対応策を考える必要が出てきます。両氏があげる課題点は以下です。

  • 「我々」と「彼ら」というように関係者を分けてしまう課題
  • 価値ではなく、コストに焦点を当ててしまう課題
  • リリース計画が固定されたスコープに対する作業であるという課題
  • イテレーション計画がプレッシャー駆動になってしまう課題
  • 「約束した・していない」というやり取りに対する課題
  • 解決案ではなく、機能に集中してしまう課題
アジャイルのメリットでもある「タイムボックスの考え方」や「チームプレイ」という部分自体が、問題となってしまう可能性を示唆しています。ただ単にプラクティスに取り組むのでなく、それぞれの背景まで理解しなければならないということでしょう。

3. 顧客とプロダクトオーナーの課題

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ビジネスにおいては、自社サービスの場合の強みや、時代の流れといった、キーとなる何かが焦点になります。もし、これがない場合は、困り果てることになり、リリース計画などにも影響が出るでしょう。また、顧客サイドと開発サイドで対立がある場合は、アジャイルなビジネス活動ができなくなってしまう可能性があります。そして、開発側は顧客サイドを意識しすぎてもだめです。なぜなら、顧客を満足させるだけではなく、その先にあるサービス価値にフォーカスする必要があるからです。

4. イテレーション自体の課題

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毎週のイテレーション計画は大変な作業です。このイテレーション自体がネックになり、アジャイルな開発ができなくなる可能性を秘めています。本来は、一つの作業の流れを追うのであればよいですが、複数タスクを持ってしまう場合は、そこがまたネックになります。しかしながら、イテレーションでの作業を学ぶことで、「作業の完了」を学ぶいい機会になるかもしれません。

5. 変化は難しいという課題

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変化は恐怖や困難を伴います。最近登場してきた「かんばん」は取り組みやすいかもしれません。かんばんはときよりパワフルな効果を生み出します。ただ単に使うのであればそれでいいのですが、本質をつかむためには、実践者の助言が必要になるでしょう。

6. シンプルであることが簡単ではない課題

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シンプルであることはいいことです。しかし、難しいプラクティスを除外するのはよくありません。必須となるスキルやソフトウェアの職人たちを軽視してもダメです。

7. アジャイルを適用するときの課題

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アジャイルという名前が誤解を招くケースもあります。誰もがアジャイルになりたいと考えています。エンタープライズアジャイルに興味を持ったり、スクラムに取り組みたいと思うのはもちろんですが、アジャイル啓蒙者が間違った認識を持っていて「偽アジャイル」となってしまうケースもありえます。さらに、我々が抱える背景はそれぞれに違っており、一つの解決方法でなんとかなることはまずありません。

Agile 2011 Conferenceでは、アジャイルの適用に関するセッションがたくさんあると思います。それらをそのまま受け止めるのではなく、「それらはアジャイルの良い点に向かっている適用なのか?」、「快適な開発になっているのか?」といったことを考えてみるとよいでしょう。

リーン、かんばん、ふりかえりといった言葉はたくさんあります。しかし、これらが本当のアジャイルになるまではアジャイルと呼ばないほうがいいでしょう。

8. 認定に関する課題

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アジャイルにおける認定とは何を指すのでしょうか?認定されることで何か大きく変わるのでしょうか?認定はときより役に立たない場合もあります。認定については、あくまで自己啓発と考えるのが良いと思います。

ただし、認定によって、共通の認識や基本となる知識を得ることも出来ます。そして、逆に「まだ知らないことがたくさんある」ということも学ぶのでしょう。

それでも正しいこと

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アジャイルは現実主義なマネジメントを実施します。例えば

  • ビジネスに直結した管理
  • コストではなく価値を管理
  • 価値を頻繁にリリース

することで、リスクの早期発見、俊敏な対応、そしてリリースへとつなげ、ビジネスバリューを意識した開発を推進します。

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そして、アジャイルには以下のような良い点があります。

  • 組織横断的なチームで解決に取り組む俊敏性
  • 同じ場所で働くことによるコミュニケーションコストの削減
  • ビジネスに直結した開発
  • 頻繁なリリースによるビジネスチャンスの向上、改善
  • しっかりした技術プラクティスによるしっかりした開発
  • シンプルさによるリーンな考え方
  • アジャイルという素敵な名前

アジャイルの展望

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アジャイルになるためには以下の点に注意をするといいでしょう。

  • コストではなく価値を測定する
  • アジャイルの良い点へとチームが向かっていること
  • 自然な流れへと近づくこと
  • プロダクトオーナではなく、チームに焦点を当てること
  • 真のスキルを身につけ評価できる体制づくり
  • アイデアの統合

セッションを終えて

両氏のかけあいは漫才のようで、とても風変わりなセッションでした。しかしながら、内容については、なかなか考えさせられるものばかりです。

最後に、なぜ、猫の写真なのかが最も謎です。英訳がへんだったらごめんなさい。