パッション

パッション「THE PASSION OF THE CHRIST」 メル・ギブソン監督作品。
イエス・キリストの最後の12時間を描いた問題作。The Passionとは「キリストの受難」という意味。
自らを「ユダヤの王」と語り捉えられたイエス。ローマ帝国の総督ピラトは、群集の声に押され、イエスを十字架にかける判決を下す。
映画では当時の言葉と思われるユダヤ語が使われたためか、雰囲気がとても出ていた。この映画では、キリストの誕生といった物語的な部分はまったくなく、拷問を受け血まみれになったり、血を流しながら十字架を背負い、ゴルゴダの丘まで歩いていく姿などがずっと続く。残酷で目を覆いたくなるのだが、「えぐい」という感覚ではない。とても悲しい。民衆はキリストを殺せと叫び、拷問する兵士たちは最後まで笑っている。群集心理。青い空。白い大地。赤い血。
キリストは彼らを思い、彼らの罪を背負い死んでいく。敵を愛せと語る姿は、たとえキリスト教徒ではなくとも、なぜか考えさせられてしまった。
有名な話である「ペテロの否認」も描かれていた。
キリストは弟子のペテロにこう語る。
「あなたは鶏が鳴く前に3度わたしのことを知らないと言うであろう」
そしてペテロは、とらわれたキリストを見て「彼を知らない」と3度言ってしまう。予言したのがどうこうというわけではなく、3度いってしまったペテロの心理?が痛々しい。
最後の晩餐などのエピソードは、映画途中の回想で表現されていた。
断片的な映像が、キリストの最後という明確な部分を際立たせているような気がした。
僕はキリスト教徒ではないのでうまくいえないが、神様がいるとする。だとすれば、遠い昔のゴルゴダで人々は神を殺してしまったということになる。人が神を殺した。
なのに神様は人を救ってくれるらしい。救ってくれている。