
ユーザーストーリーは、簡易的なフォーマットで書かれた軽量ドキュメントなので、仕様書よりも扱いやすい。そして、仕様書のように詳細が書かれていないため、ソフトウェアを完成させるためには、コミュニケーションが必須となる。
これはユーザーストーリーを考えた人の狙い通りだ。人と人とのコミュニケーションを重視する、アジャイル開発の価値観にもマッチする。
ところが、AIが登場したことで、この考え方も再考が必要になってくるかもしれないと感じることがあった。
今の時代は、AIをいかに活用するか? 活用できるかに主眼が置かれ、誰もがその可能性を見定めようとしている。はじめは疑心暗鬼だったとしても、現在では部分的な信頼も深まってきたのではないだろうか。
実際に使ってみると、できるだけ正確に、詳細に、プロンプトを入力すれば、こういうのあればいいな、でも作るのめんどいなと思ってたChrome拡張も5分でできた。さらにできあがったものに対して、「ここをもうちょっとこうしてほしいんだけど」と伝えれば、期待通りの改善もしてくれる。
「作る」が、AIによってとてつもなく簡単になった。これによって、「できるだけ作るものを選んで試そう」から、「たくさん作ってたくさん試そう」ができるようになってしまった。リーン開発的には「ムダなものを作らない」に反する形だ。
さらに、作るためには、上にも書いた通り「できるだけ正確に、詳細に、プロンプトを入力」する必要がある。これはまさにユーザーストーリーと逆の流れとも言える。
さてさて、ユーザーストーリーとAIは仲良くなれるのか? 新しい技術によって、新しい課題が提示されてしまった。