忖度なしでおすすめしたいアジャイル開発やスクラムを学べる3冊

ジュンク堂 渋谷店の本棚には活きのいいのがそろってる。

お客さまから「アジャイル開発学ぶのにいい本ない?」と聞かれることは多いので、時と場合に合わせて紹介する本をまとめておく。

教養として読んでおきたい『アジャイルサムライ』

著者のJonathanは「たくさんあるアジャイル本を顧客に紹介するのが面倒なので、『アジャイルサムライ』にまとめてみた」そうだ。よってこの本は、入門書としてとてもふさわしい。

そして、この2010年代の1冊が、日本のアジャイルムーブメントを引き起こしたと言っても過言ではない。

翻訳が読みやすいので誰でも学びやすく、読書会などでわいわい楽しみやすい内容なので、はじめてアジャイル開発に取り組むチームだけでなく、ソフトウェア開発に関わるデザイナー、ビジネスといったエンジニアじゃない人たちにもおすすめだ。

アジャイルサムライ――達人開発者への道』 オーム社

2020年代はプロダクトの時代の幕開けだから『プロダクトマネジメント』

近年流行りのプロダクトマネジメント。書籍もたくさん出てきているが、多くが「手法」をメインで語る中、具体的な「ありかた」がうまくまとまっているのが『プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』だ。

副題の「ビルドトラップ」は、アジャイル開発で遭遇するよくある罠を表しており、実践者なら共感を得る部分が多いはずだろう。僕の場合、自信が持てないPOに必ずこれをおすすめしている。

プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』オライリー

組織論にたどり着いたなら『だから僕たちは、組織を変えていける』

アジャイル開発やスクラムを続けていくと、必ずと行っていいほど組織の壁にぶつかる。よって、「アジャイル開発は組織論だ」という意見もある。

だから僕たちは、組織を変えていける』はアジャイル開発の本ではないが、サーバントリーダーシップ、自己組織化されたチーム、ノーススター、組織のスケール・・・と、アジャイル開発で語られる組織論がとてもうまくまとまった希望に満ちた一冊だ。

だから僕たちは、組織を変えていける』クロスメディア・パブリッシング

それ以外は?

基本として『アジャイルサムライ』。PO向け『プロダクトマネジメント』。マネジメント向け『だから僕たちは、組織を変えていける』で、初級から中級レベルの知識は手に入る。

これらを読んで、もっと知りたいトピックが見つかったら、そのトピックを掘り下げている書籍を探すのがおすすめだ。

以下に、自分の口からよく出てくる本を何冊か紹介しておく。

従来型に慣れた方向けの『PM教科書』

最近ではアジャイル開発しか経験したことがないアジャイルネイティブなエンジニアも増えてきている。しかし、大多数は従来型からのシフト組みだろう。そういった人たちにアジャイル開発の概念を伝える場合、従来型との比較をすると、自分の現場に導入するイメージを持ってもらいやすい。

そこでおすすめなのが『PM教科書』。PMP試験のテキストだが、従来型のプロフェッショナルの視点でアジャイル開発が語られている点は、従来型に詳しい人も、アジャイル開発に詳しい人にもおすすめの一冊。違いを知ることが融合の一歩になるはず。

PM教科書 PMP完全攻略テキスト PMBOKガイド第7版対応 改訂版』 翔泳社

どのチームも苦労する永遠の課題『アジャイルな見積もりと計画づくり』

アジャイルコーチとして支援に入ると、必ずといっていいほど誰もがぶつかるのが見積もりと計画づくり。これに関しては、『アジャイルな見積りと計画づくり』を読めば、知識としてはばっちりだろう。

アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~』マイナビブックス

ユーザーストーリーのいい解説書ないので『ユーザーストーリーマッピング』

スクラムの大活躍で、アジャイル開発が普通になってきた。しかし、ためになるユーザーストーリーの日本語書籍がない!『User Stories Applied』は翻訳されずもう20年前の本になってしまっているし、XPのストーリーの解説は行間が広すぎる。

ユーザーストーリーマッピング』は、ユーザーストーリーの視覚的なマッピング手法を解説した本だが、読んでみるとそれはごく僅かで、著者のJeffは本書のほとんどをユーザーストーリーのあり方について語っているのがよくわかる。それぐらいユーザーストーリーはアジャイル開発において重要なトピックなのだ。

個人的には書籍名を『ユーザーストーリーとユーザーストーリーマッピング』に変えたほうがいいよとJeffに伝えたい一品。

ユーザーストーリーマッピング』オライリー

進化を止めたらボブおじさんに怒られるから『Clean Agile』

著者のボブおじさん(通称:アンクルボブ)はカンファレンスの常連で、いつも「お前ら、コードきれいに書け!」とボヤいているアジャイル界の野村監督みたいな存在だ。

僕が『Clean Agile』を手にしたときは、「やれやれ、またボブおじさんの説教か」とげんなりしたが、蓋を開けてみると、ボブおじさんのアジャイル開発に対する情熱がすごい内容だった。

アジャイルマニフェストが生まれたときの情熱をお前たちは忘れたのか? ちょっと知識がついてきたぐらいの人におすすめしたい一冊。

Clean Agile 基本に立ち戻れ』 KADOKAWA

スケールに真面目に取り組む時期が来たら『スクラムの拡張による組織づくり』

スケールに関する日本語書籍は多いが、『アジャイル開発の本質とスケールアップ: 変化に強い大規模開発を成功させる14のベストプラクティス』は翻訳が良くなく、大抵は輸入物ばかり。

スクラムの拡張による組織づくり』は特定フレームワークに依存はしてしまうが、日本人が日本の環境に向けて解説しているので参考になる点がとても多い。スケールを意識しだしたらぜひ読んでほしい一冊。

スクラムの拡張による組織づくり──複数のスクラムチームをScrum@Scaleで運用する』 技術評論社

時を越えて輝く『アジャイルプラクティス』

この本は、僕がプログラマになって数年目で、社外に一人でドナドナされたときに手にした本だ。エンジニアとしてどう振る舞えばいいのか聞く相手がいなかったので、この本に頼っていた。

あれから20年近く時が経ち、20代の若いエンジニアにこの本をおすすめしたところ、「一部は古くて使えない部分もあるが、とてもおもしろい」と感想をもらった。

アジャイルプラクティスは砕けないのだ。

アジャイルプラクティス 達人プログラマに学ぶ現場開発者の習慣』 オーム社

本の評価は難しい。Amazonのレビューを見ても、タダで本をもらった人が「すごくためになりました!みんな読むべき!」みたいなのが多いし、出版社もこれを容認しているからたちが悪い。

本の評価は難しい。なぜなら、僕のような庶民の場合、読むタイミング、読んだ環境、読んだときの気分で左右されるからだ。

でも、よい本は人生までも変えてしまう力がある。自分にとって、そういう本を今回は紹介してみた。

みなさんがよい本に出会えることを祈って。

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