スクラムマスターはアスファルトの割れ目から自然に生えてこない話

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お客さま先でオープンスペーステクノロジー(OST)をやると聞いたので参加してみた。OSTははじめてだったけど、いろいろな話を聞けて面白かった。そんなOSTで僕がテーマにあげたのが「スクラムマスターは誰が育てるのか?」だった。スクラムマスターはどのように生まれて、だれが育ててくれるのだろうか?

スクラムマスターの生まれ方

これにはいくつかのパターンがあるように思う。

  1. 興味を持った人が自律的にスクラムマスターになるパターン
  2. 1のような人が身近にいたので、それを引き継いだパターン
  3. 誰かにアサインされるパターン
  4. 外からやって来るパターン

1のパターンは数が少ない。自分もこのパターンだけど、1000人いる会社で数人もいなかった経験があるので、「作り方に興味を持つ人がもっと増えればいいのになぁ」と思ったものだ(今ではもう当たり前なスキルになってきたが)。

2のパターンは1のパターンから広がっていくパターンだ。1と一緒に働いた人が、次のエバンジェリストになっていくのは、『エクストリーム・プログラミング』でも紹介されている方法でもある。

3はマネージャなどから指名されるパターン。アサインされた人の自律性が試されるせいか、うまくいったり、うまくいかなかったりして、結果の不安定さが大きい気がしている。

4のように業務委託など通してスクラムマスターを外部から雇うのは、組織展開などで躓くケースが多く、個人的にアンチパターンな気がするのでここでは言及しない。

スクラムマスターの育て方

1や2のパターンは勝手に成長するので気にしなくてもいい。

問題は3だろう。

自律性が高い人は、1や2を探したり、自然になっていくから心配ない。しかし、そうじゃない場合、何をすべきか教えてくれる人がいないので、行き詰まってしまう。

こういう場合は次の手段を模索するしかない。

a. アジャイルコーチを雇う
b. トレーニングを受ける

aのいいところは、自分たちにあった提案をしてくれる点だろう。トレーニングではなかなか聞けない、自分たちの事情を話しやすく、具体的な課題を相談しやすい。そして、自分で学ぶより、インストールしてもらったほうがはやく学べる。育成も手伝ってくれるはずなので、アジャイルコーチへの依存も減らせる。

bのいいところは、専門家のトレーニングを受けられ、身に付けられるところ。認定のトレーニングだと、認定がもらえるのが受講者のモチベーションとして大きいように見える。

どちらにせよ、お金がかかる。

スクラムマスターが育つ環境

これまで書いてきたように、アスファルトの割れ目から自然に生えてくるような、自律性が高くたくましいメンバーがいない限り、スクラムマスターを育てるのはとても難しい。

よって、お金を使ってアジャイルコーチを雇ったり、トレーニングを受けたりもできるが、そこから先は環境が重要になってくると思う。

育つ環境を作ることで、アスファルトを割らなくてもいいし、生えてくる芽を増やせる。

たとえば、こんな環境を作ってみてはどうだろうか?

  1. 入社した人に対するオンボーディングトレーニングの一環として、アジャイル開発・スクラムトレーニングが準備されている。ここでは、組織としてどう取り組んでいるか? が説明され、新しいメンバーでもその方向性をすぐに理解できる状態を目指している。
  2. チームに入ったあとのOJTで、アジャイル開発・スクラムの実践方法が解説されている。チームとしてどう実践しているかが解説され、すぐにイテレーション・スプリントに参加できる状態を目指している。
  3. 定期的にビジネス側にソフトウェア開発に関する情報発信がされている。これによって、BizとDevの協働作業の重要性を理解でき、共通のゴールを達成できる文化づくりを目指している。
  4. 必要に応じて、ビジネス向けや開発向けのトレーニングが提供されていて、社内コミュニティーがそれを支えている。

スクラムマスターが生まれるきっかけがいろいろあったとしても、育つ環境は共通して必要だろう。育つ環境ができれば、次の自律したスクラムマスターが生まれる可能性も高まる。

自然に生えてくるのを祈るのではなく、大きく育つ土を作ってあげよう。

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