となり町戦争 – 三崎亜記

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となり町戦争

僕は耳をすませた。彼女の言うとおり、僕は、僕は僕のイメージの中の「戦争」を特別視していて、現実の戦争が見えていないだけなのかもしれない。
          第2章 偵察業務 より

町の広報にこんな記事が書かれていた。「となり町との戦争のお知らせ」。僕はその「戦争」というものがイメージできず、普段と変わらず生活をしていた。やがて僕のところに「偵察業務従事者の任命」という封書が届く。理解できない僕は、となり町との戦争に参加するため、偵察業務を行うことをきめるのだが・・・。
小説すばる新人賞受賞作。
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たくさんの血が流れ、バタバタと兵士たちが死んでいく映像。または、リポーターが絶叫を上げる中、圧倒的な空襲により、明るく照らされ破壊される町。戦争を経験したことのない人間が考える戦争と言うものだ。
しかし、この「となり町戦争」では、そういったものが一切存在せず、日常と戦争の違いがわからず、戦争と言うリアルを受け入れることのできない主人公が描かれている。これは現実に生活する僕みたいな「戦争を知らない」人間にはとても理解できる描写だった。

この複雑化した社会の中で、戦争は、絶対悪としてでもなく、美化された形でもない、まったく違う形を持ち出したのではないか。実際の戦争は、予想しえないさまざまな形で僕たちを巻き込み、取り込んでいくのはないか?

突然の戦争の告知。部屋の窓から外を見てもいつもの日常が流れている。しかし、徐々にその平穏な時間の裏に、たくさんの血が流れていることを知っていく。「平和」だといわれていても、極端に言えばたくさんの人の血の上を歩いているわけだ。誰も気がつかないかもしれないが現実は戦争状態なのだ。確かにそうかもしれない。

ただしその「否定」は「あってはならないもの」「ありえないもの」としての消極的な否定であり、「してはならないもの」としての積極性を伴った否定にはつながりえないようだ。では、「現にここにある戦争」を、僕たちは否定することができるだろうか?

私たちには理解できないかもしれない。現実と言うものはとてもあいまいなくせに、リアルに感じさせる部分がたくさんある。「となり町戦争」は「何が戦争なのか?」という素朴な疑問について、繊細に語られている。あいまいな現実のように、不思議な戸惑いを繊細に描いている。
僕らがリアルだと決め付けてしまっている、イメージどおりの戦争。それが何なのかということを考えさせられる本だった。確かに読んだあとはいろいろなことを考えて、考えてしまう。
遠くで起こっている戦争が自分に関係ないなんて。もしかしたら心の奥底でそう思っている自分がいるのかもしれない。
<参考>
積ん読パラダイス となり町戦争

コメント

  1. 三匹の蛙 より:

    読みましたよ、これ!
    意図していることが海の向こうで戦争が始まると似ている気がしました。
    内容はともかく…行政と行政の戦いという設定が
    面白いなぁって思いました。
    戦争が利益を生むということは
    実際にベトナムの戦争でもそうだったわけで
    それが行政レベルで…となるとなんとも不思議な感じですよね。
    こうやって事務的に進む戦争を想像すると
    肌寒い感じがしますが、実際はそういうものなのかもしれませんね。

  2. だい より:

    戦争についてこういう形で語られるのは新しい感じがしますね?。なんか妙な気分がするところがリアルなのかもしれません。

  3. *モナミ* より:

    『となり町戦争』 三崎亜記

    なにか、スッキリしない本。
    なぜなら、「誰が、何のために」となり町との戦争を、
    起こしたのかが、最後まで分からなかったから。
    でも、それは重要ではない…