『ピクサー流 創造するちから』はWebサービス開発マネジメントの良書だった

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原題『Creativity, Inc.』。その言葉が象徴するような創造的な組織はどうやって生まれたのか? なぜピクサーはディズニーによる買収を選んだのか? 買収後、低迷していたディズニーからなぜ『アナ雪』のような名作が生まれたのか? 最強のクリエイティブ集団を支える哲学と、その組織開発やマネジメントに圧倒されてしまう良書。

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ピクサー流 創造するちから

ピクサーといえば『トイ・ストーリー』を代表するフルCGの映画制作会社で有名です。日本で言うならばスタジオジブリ。ピクサーのジョン・ラセターさんは宮﨑駿さんと交流を持っています(『風立ちぬ』のTVCMにジョン・ラセターさんが出ていたり)。

そして、TVでもたまに紹介されるピクサーのすばらしい職場環境。そのビルをデザインしたのはあのスティーブ・ジョブス。彼の功績をたたえ現在はスティーブ・ジョブズ・ビルディング(The Steve Jobs Building)と呼ばれているそうです。

有名映画。職場環境。話題になりやすい部分が目立つのは当然だと思いますが、どうやって創造的な職場を作ってきたのかはなかなか知る機会がありませんでした。しかし、本書の著者であるエド・キャットムル氏は、最前線で組織を作り上げてきた人物です(現社長)。

書いてあることがおもしろくないわけがありません。

創造的な組織文化

自分自身はWebサービス開発の仕事をしています。チームをリードするようになってきたときに感じたのは、いかに創造的な仕事をするか? というテーマでした。ちょうど2011年から2012年ごろ。アジャイル開発におけるリーダーシップについて考えたときも「ソフトウェア開発の創造性」が浮かび上がってきたことを覚えています。

エド・キャットムル氏は言います。

ピクサーの創業者 ――スティーブ・ジョブス、ジョン・ラセターと私――がいなくなってもずっと生き続ける組織文化を創る、私はずっとそれを目指してきた。

納期に間に合わせるためでもなく、ただ新技術を導入するだけでなく、実際に使うユーザやそのサービス・プロダクトに向かって、いかに創造的に働くか? 個人には限界があり、チームとして、組織としてどうすればそういった文化や哲学を育てることができるのか? これは僕自分における、仕事に対する永遠のテーマでもありました。

そして、彼はその目指してきた道のりを、惜しげもなくこの本にまとめているのです。

個人の創造的貢献と、集団としての力とのせめぎ合いは、クリエイティブな環境にはつきものだ。(中略) 個人ですばらしい仕事をする天才がいる対極には、いろいろな考えが集まるからこそ卓越する集団がある。私は思った。では、この二つの対極をどう両立すべきなのだろうか。

とんがったエンジニアのパフォーマンスは最強です。しかし、それだけではいいプロダクトはできません。一方で、集団による多様性が生み出す成果もあり、それらをどう組み合わせていくか? まさにこのテーマに悩んでいた時期もありました(今も悩んでいます)。

スティーブ・ジョブスという存在

最後に、ピクサー社の転換期に登場するスティーブ・ジョブズとのエピソードは感動的でした。特に、ピクサーをディズニーに売却したあとの一言に胸を打たれます。

そしてなによりも、彼との別れ。最後の章を読み終えたときは、彼が船出したあと、その功績に敬意を持つ世界中の誰もが感じた喪失感を再び感じ、涙がとまらなくなりました。

物語でありながらも創造力が求められる組織におけるマネジメントの手引書となっている本書は、最高に面白かった。本当に面白かったです。