先日、アジャイルサムライ読書会横浜道場に遊びに行きました。横浜道場では発表後にディスカッションがあり、いろいろとフィードバックを聞くことができたのでとてもためになりました。今日は、いくつかいただいた質問に答えてみようと思います。
いやーとても楽しい道場でした。資料はメインがこちらで追加したエピローグはこちらで公開しています。当日の回答やふりかえりについてはgithubにて公開されていますのであわせてご確認ください。
1. 心が折れない理由は何ですか?
心は折れます。ただ、骨折と同じで「折れた部分は治ると太くなる」ので、多少のことではへこまなくなってきました。そのかわりになにか大切なものを失っているのではないかと心配になることもありますが、私は元気です。
メンバーのことを考えると前向きに考えざるをえません。問題をどうするかが問題だと思っているので、問題自体を悲観的に考えないようにしています。心配するのはいいことだと思うのですが、しすぎると疲れちゃいますから。
2. 組織が同じ方向を向くにはどうすれば良いですか?やっている工夫はありますか?
デブサミ後、組織とアジャイルについて質問をよくいただくのですが、僕は経営者・経営層ではなく普通のサラリーマンなので「組織として」のような職能を超えたことをあまり考えないタイプです。
ただ、経営者意識と自分なりのビジョンは持つようにしています。現場にいると必要なモノ・コトが比較的すぐわかるので「こうなったら速くなるなぁ」というアイデアを考えたり、それを実現した先の未来も考えます。問題に気づいているのに議論だけで何もしないのは不完全燃焼なので、できるだけ経営層にも伝えていくようにしています。
あとはこうやって浮かんだアイデアを話したり話してもらったりと、インタラクティブにやりとりを続けるぐらいでしょうか。たまに「全員で○○やってみましょう」とかもしますね。サプライズ誕生日イベントとか、リリース後に皆でドーナツ食べたりとか。
3. 権力ファーストはありか?
日本の企業(日本の会社でしか働いたことがないですが)って、トップの号令に従わずのらりくらりかわしていても給料がもらえるらしいということに最近気がつきました。それでクビにもならない。極端に言えば、命令に従わなくても給料がもらえる。こういう雰囲気が強いところだと権力ファーストは難しそうに思います。
この質問もよく出てくるんですが、いつも「なぜ」「なんのために」があまり語られないので、もっとそこを考えたらいいんじゃないかなーと思います。「そもそもアジャイルやらないとだめ?」とか。多数の人間が「ああ、なるほど」という理由があるのであれば、権力でもなんでも使えるものは使ってやればいいと思います。
4. 継続する為に工夫している事はありますか?
「常に改善します」を前提条件としているので、タイムボックスをきって定期的にふりかえりをするのは必須になっています。ふりかえりがちょうどいい確認ポイントになるんです。
Tryでやってみたことがイケてない場合はそういう雰囲気になるし、いつの間にかやらなくなったりするので、そこを見定めてきちんと「うまくいかないからやめようか」と聞きます。止めることもきちんとコミットしたほうが次に進みやすいからです。
5. 残業時間は長くなりましたか
仲間意識が強くなると、「俺、今日はここまでやる!」「俺も負けないぜ!」みたいに盛り上がってしまうことが多かったです。楽しくなってきて残ってがんばっちゃう。
ただ、ぐあーっとがんばるよりも継続的に無理せず進めてほしいので、アジャイルバーサーカーになったメンバーは「あと10秒でPCの電源引っこ抜きます」とかやって強制的に帰したりしています。間に合わないのであればスコープ変えればいいじゃんと説得ですね。
6. ファシリテートしている時に心掛けている事は何ですか?
はじめは、サンデル先生の授業みたいに、相手に質問しながら巻き込んでいく形を意識します。軌道に乗ると自然に意見が出るようになるし、皆が意見を言える場を作る段階はこれが一番良かった。
次に時間に気をつけます。例えば、「今日は朝礼を5分で終わらせます。人数も増えたので1人20秒ぐらいしかありません。20秒で全員に伝わる共有をしてください」と「やるべきこと」、「時間」、「やりかた」を伝えることで、普段の朝礼も徐々に洗練されていきます。いまいちな共有があれば「いまいち」とフィードバックするようにもしています。
7. 評価のやり方、そもそも評価が出来るのか?
僕の場合は、マネージャーが現場におらずチームに寄り添う形だったので、定期的に評価情報としてチーム状況を伝えるようにしました。いいところも悪いところもその対策も全部、つつがなく共有し、メンバーに自分の成果を発表させるよう促したりもしています。
逆に、今の評価制度はうまくいってるんですかね?評価する人が評価される人を見ているか?自分自身の評価をさせているか?その妥当性を周囲に確認しているか?あたりがちゃんとしていれば、開発手法に影響されない気がするんですがどうなんでしょう?
8. カバレッジ98%って本当?
UTを一回通せば高い数値になることがはじめにわかっていたので、「1回はテストしましたよね?」の確認として基準は定めました。ただ、達成できない部分ももちろんあるので、あくまで基準としてしか扱っていません。
今回の事例ではこれぐらいのやりかたでバグやデグレードを抑えることができました。他の時も80~90%ぐらいは余裕で超えます。慣れてくるとテストケースの精度を上げるなどに進んでいくことが多かったです。
9. 暗い雰囲気のチームを変えるためにどうしたのですか?
まずは、なってほしいチームや現場をイメージで伝えました。はじめの1ヶ月はとことん話した記憶があります。少人数だったので、全員納得の上ではじめることができるように話し合いました。
人数が増えたときは、これまでのように時間をかける時間がなかったので、「すごい会議」を参考に1日かけて話し合いました。インセプションデッキのチーム版みたいな会議です。マニュアル本みたいに見えますが、やれば効果って出るんだなぁと当時思いました。
10. 全員がアジャイル初めてのチームではXPの要素から取り入れたら良い?
当時一緒に働いたメンバーは技術的プラクティスを知らないエンジニアが多かったせいかXPがマッチしました。人数が増えたときはスクラムから多くを学んだ気がします。
11. 20名を作れたとして、どうやってギャズムを超えるのか?
なんのためにキャズムを超えたいのでしょう?
僕はこの答えがまだ出ていないのであまり意識していません。現場によって問題は様々なので、スタンダードを目指すのは難しい気がしています。ただ、アジャイル開発がブームになっているように、魅力は大きいのだろうと思うので、引き続き注意深く動向を見守っていこうと思っています。
その他にも、ボトムアップとトップダウンの議論もいろいろ出てますが、ボトムアップでやるならちょっとした勢いだと制圧されてしまいますから。勢い(仲間の数かな?)が必要だと思います。
12. なんでみんな転職するの?
流行ってますよね。もっと流動的になっていけば、会社も焦るんでしょうかねぇ。他人の心配よりも自分のスキルを磨きたいと思います。
終わりに
アジャイルが注目されると同時に、組織の問題にも注目が集まっているように感じます。なかなか難しい問題かもしれませんが、この変化は避けて通れない気がします。肌感覚で5年後かもしれないし、明日かもしれない。
また、参加者には「アジャイルを広めたい!」という熱意のある方が多かったので、ちょうど読み終えたところなのですが、達人出版会さんからでている「How to Change The World」を読んでみるといいかもしれません。アジャイルマネジメントについての一つの行動を知ることができます。
「知っている」だけでは変化ははじまりません。