小説「花と火の帝」は徳川初期でありながらJOJOの様な冒険活劇

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徳川の時代。鬼の子孫とよばれた八瀬童子である岩介は、天狗と共に冥土へと向かい、恐るべき能力を身につけて帰ってくる。そして、心のなかに強い炎を持った後水尾天皇と出会い、朝廷を骨抜きにしようとする幕府との戦いを決意するのであった。

花と火の帝を読了。膨大な資料から得た情報を紡ぎ、歴史小説に新たな一面を加えた、隆慶一郎さん最後の魂の作品。この小説を書き上げることができずお亡くなりになった、隆氏のご冥福を心よりお祈りいたします。

「天皇の隠密」として、不殺生の戦いを繰り広げる岩介。そこに、猿飛佐助、雲隠才蔵、風魔一族といった個性豊かなメンバーが集まり、幕府からの策略や刺客と死闘を繰り広げていく。

読み始めるまでこんな物語だとは思わなかったが、超人と化した岩介はもとより、有名な忍、呪術者の能力に魅了され、その戦いに息を飲む。次々と送られてくる刺客も強く、柳生一族といった日本の戦闘部隊だけでなく、インドや中東からも現れ、その戦いが始まったところで小説は終りを迎える。

人の心を読んだり、指先から炎を吐き出したり。様々な能力が繰り広げられるのだが、それらが浮いた形になることもなく、小説の中に溶けこんでいるのは、物語の強固な骨組みとその筆力に違いないのだろう。

登場人物が、生き生きと描かれており、その一人ひとりを好きになってしまう小説だった。史実を交え、実際の歴史のように感じてしまう。本当に読み終えるのが残念で仕方ないと感じた。

僕は、これまでに未完の小説を読んだことがなかった(と思う)。

この小説がまさに初めてなのだが、これほどまでに燃え上がった物語の結末を読むことができないのは、ほんとうに残念であり、作者の無念が伝わってくる。

この小説は、これまでの時代小説の概念をさらに進化させ、読者に本を読む楽しさを伝えてくれる。そんなすばらしい本だった。