この街

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この街

どこに向かうのだろう
何を見つけるのだろう
by 元ちとせ 「この街」より

窓を開けると、昨日とは明らかに違う風が入ってきた。
DAKARAをラッパ飲みしながら、ソファーに寝転ぶ。TVからはたくさんの映像が流れるが、どれも頭に入らない。そばにあった本、江国香織さんの「号泣する準備はできていた」を手に取り、本のタイトルにもなっている短編を読み始める。
TVを消すと電車の音。赤い電車「京浜急行」の泣き声が聞こえる。風が優しく吹く。音はどこか遠くのほうから聞こえてくるような気がする。ちょうどいい静寂だ。本を閉じて息を吸ってみる。部屋に入ってくる風の量と同じ量だけ息を吸ってみる。ちょうどよく冷えた空気が自分にしみこんでくる。胸が締め付けられるようになる。胸が文字通りキュンとなっている気がする。
夏から秋に変わる空気の匂いがする。この匂いが僕はとても好きだ。これからどんどん冷たくなる。どんどん体にしみこんで、今以上に胸にしみてくるのだろう。その匂いは、夏の早朝の匂いとは少し違う。どちらもさやしくうれしいものなのだが。また同じ季節がやってきた。同じ匂いがやってきた。タバコに火をつける。深く吸う。
タンクトップと短パンじゃもう寒い。冷たい風は今日みたいに一番初めにあいさつにくる。この風はどこから来るのだろうと考える。衣服と同じで「秋用」とか「夏用」とか区分けして作られることを考える。浸透する風はとても静かで、とても懐かしい。静かに、静かに、浸透する風を感じる夜はとてもいい。
夜だ。
アフターダーク
タバコの火を消す。
*
元ちとせ 「この街」