アフターダーク 村上春樹

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アフターダーク 村上春樹

最近は、寝る前に読む本と通勤で読む本という具合に分けて読んでいるのだが、「アフターダーク」は家で夜から朝にかけて読むといい本だった。村上春樹さんの本はやっぱり読みやすいが、理解できないが、なぜか取り付かれたように読んでしまう。
マリは深夜、デニーズで本を読んでいた。このまま彼女は朝を迎えるのだろう。トロンボーンを抱えた若者がデニーズに入ってくる。彼はマリを見つけ、マリの前の席に座る。夜明けまでには、まだずい分時間がある。

「夜が明けるまで、一人でどっか家じゃないところにいたかったんです」

マリは夜が明けるまでデニーズで過ごそうとしている。トロンボーンを持った若者「高橋」は今日でトロンボーンをやめようと思っているらしい。「音楽を演奏するのは、空を飛ぶことの次に楽しい」と彼はいう。高橋はやがて夜の町に消えていく。マリはまた本に視線を戻す。
コオロギと名乗るラブホテルのベッドメイクスタッフ。彼女は何かから逃げている。マリは彼女に言う。
「うまく逃げ切れるといいですね」
コオロギはしばらく考えているが、やがてうなずく。
アフターダークの途中に携帯電話のシーンがある。あたりまえのようにそこにある携帯電話から声が聞こえる。誰かはわからないのだが、相手のことを考えずに語りかける。

「逃げ切れない」と男は言う。
「どこまで逃げてもね、わたしたちはあんたを捕まえる」

この声の持ち主について、文章から推測すると、間違えなく少し出てくる登場人物の1人だと考えられる。しかし、携帯電話からの声の内容を聞いていると、物語を通じて登場する視点の持ち主が語っているような気がした。
「アフターダーク」は映画のような本だった。語り方はとても静かで、音楽や食べ物だけがしっかりとした名前を名乗っている気がする。夜の風景が頭の中いっぱいに広がり、映像がぐるぐる回ってくる。
そして夜の本だった。深夜、皆が寝静まった頃、実家ではタバコをすわないため、玄関口で座ってタバコをいつも吸っていた。静かな夜。遠くからかすかな街の音が聞こえる。静かな夜。そこで空を眺めたときような夜のにおいがこの「アフターダーク」からする。
仕事で徹夜して会社の屋上でタバコを吸う。静かな夜。遠くに街の明かりが見える。静かな夜。疲れからか、感覚が若干鈍感になり、億劫に空を眺めたときのようなにおいがする。

ごく普通に登場人物はすれ違い、わずかな生活の一部を誰にも知られることなく共有する。闇は皆を覆い、その中で人々はうごめいている。同じ闇の中、善であれ悪であれ、皆が同じ闇の中を生きている。
「アフターダーク」はJAZZの名曲、カーティス・フラー(Curtis Fuller)の「Five Spot After Dark」からとられているようだ。また、懐かしい匂いがするフレーズがあった。「アフターダーク」の販促で使われたポスター。その写真と言葉に影響され、いてもたってもいられず東京の夜景の写真を撮り、同じようなものを作ってみた。それがこのエントリの冒頭の写真だ。「1973年のピンボール」でのワンシーン。

「おやすみ」と鼠は言った。
「おやすみ。」とジェイが言った。
「ねえ、誰かが言ったよ。ゆっくり歩け、そしてたくさん水を飲めってね」

ゆっくり歩き、水をたまに飲みながら、東京の夜を歩くのもまたいい。

コメント

  1. vol.22「 アフターダーク 」村上 春樹

    電源の切れたテレビ画面に現れる映像、その中の世界。
    眠り続けるマリの姉、エリはその不可思議な世界の中ではっきりと描かれます。
    ラストのほうで姉妹が一緒に眠…