天国までの百マイル

感想おまちしてます!

daipresents2004-05-01
36時間の箱舟
終章:その後の世界
少し目が覚めるたびに、寝返りをうってまた眠る。
目が覚めたときには、予定していた時間をだいぶ過ぎていた。
重い体を持ち上げ、シャワーを浴びた。
簡単な用意を済ませ、家の鍵を閉めた。
今日も晴れている。ただ空を眺めた。
新横浜駅は、ゴールデンウィークが本格に始まったことが
自然と感じられるくらい込み合っていた。
横浜アリーナでコンサートもあるようで、若い女の子が多い。
チケットを求める姿が、休日の午後に華を添えている。
適当な土産を見つけながら、食事を取ろうと思った。
その考えもすぐうせ、行列のできた店先は、
食欲のない僕にはちょうどよかったと思う。
予定通り、座れる席はなかった。
いつも乗る地下鉄のように、来ていた列車に乗った。
乗ろうとした扉の前で、電光掲示板を眺める。
行き先なんてどこでもよかったのがそのときの気持ちだった。
この列車は九州までいくんだ。
乗った場所は指定席の車両だった。
そのまま電車の先頭の自由席を目指す。
目的地についても座れる場所などないのは当たり前だった。
どこでもいいか。
車両の狭間に荷物を置き、流れる風景を眺めた。
山側には僕と同じように、席に座れない女性が大きな荷物の上に座っていた。
後で聞いたのだが、彼女は西明石まで帰るらしい。
時より外を眺める姿が、妙に印象に残った。
風景をしばらく眺めていた。
進む方向を向けば、景色はどんどん攻めてくる。
逆を向けば、それはどんどん去っていく。
時折見せる海を気にしながら、「天国までの百マイル」を読み始めた。
「天国までの百マイル」浅田次郎
会社も倒産し、目標もなく生きる主人公。
その主人公の母が倒れ、大学病院に見放される。
主人公は母を連れ、最後の希望を信じ、
百マイルはなれた病院を目指す。
目指す病院には「神の手」を持つ医者がいる。
それだけを信じ、いつ死んでしまうかわからない母を連れ、
無謀な賭けに出る。
百マイルは大体160キロらしい。
主人公が目指すのは千葉の房総半島。
死にかけの病人を運ぶにしては尋常ではない距離だ。
人間の再生。
母親はいろいろな価値観を持っていた。
4人の子供を育て上げ、主人公の安男を除く3人は
社会的に成功するまでにいたった。
母親の気持ちなどは、子供はわからないものだ。
大人になってもわからないこともある。
親子の絆や擦れた恋愛が、痛々しく描かれていた。
ISBN:4022642483:image
ISBN:4022642483
本を読み終えると、新幹線は「浜名湖」にさしかかろうとしていた。
本の余韻は、まだ僕を包んでいる。
なぜか、最後の章を読み直してみた。
いろいろなことを思い出していると、心が震え少し泣いた。
山側にはすばらしい浜名湖の風景が移っていた。
女性に声をかけ、少しだけ風景を眺めさせてもらった。
「富士山はもう過ぎましたよね?」と聞くと、
「今日は富士山が見えなかったんですよ」と少し残念そうに言ってくれた。
「天国までの百マイル」は予想通り僕を泣かした。
そして、予定通り新幹線で出遭った女性にその本を渡した。
昨日からいい本だったら誰かにあげようと思っていたのだ。
(当初は隣の席の人だったのだが)
女性は「電車に酔うんです」といいながら、少しだけその本を読んでいた。
しばらくして、「酔ってしまいました」とすこし照れながら笑った。
キーンと永遠に続く音と、ガタンガタンという揺れる音がずっと続いていた。
どうやら少し酔ったらしく、駅で買ったお茶を飲み干した。
気分を紛らわそうと、たくさんの歌を小さく歌った。
「These Days」ボンジョビ
「Youthful Days」Mr.Children
「空も飛べるはず」スピッツ



最後になぜか昔作った曲の歌詞を思い出した。
PCを買ったのも、自分に流れる曲を形にしたかったからで、
詩はサビだけ書いて、後はそのとき仲良かった子に書いてもらったのだった。
確か、4ヶ月ぐらいかかったっけ。
和音がわからず、イメージで作ったな。
なぜかふとそれを思い出した。
>>
何も見えない世界の中で、僕はここにいるのかな
声にならない言葉なんて、きっと君には届かないだろう。
きっと僕にもわからないだろう
<< 目の前に、不思議な光景が浮かんだ。 僕の実家は大阪の北にあり、小高い山の上にその場所はある。 急な坂道は、25年たっても変わらないだろう。 坂の上にある家からは、僕の住む街を美しく見下ろすことができる。 僕はこの場所で育ち、この場所に育てられたのだろう。 家を飛び出し、陽のあたる坂道を駆け下りる。 その姿は、まるで街に飛び込んでいくようで、心が躍る。 坂を駆け下りる僕の後姿が浮かんだ。