10発の銃弾

感想おまちしてます!

daipresents2004-04-13
(写真)ゆうくも
目の前に拳銃がある。
急増する凶悪犯罪。下がる警察の検挙率。
ついに政府はさじをなげ、自己防衛として国民全員に
拳銃を配布した。ついに日本で銃社会が始まったのだ。
私の目の前には拳銃があり、10発の銃弾が入っている。
一人一人が拳銃を手にすることで、「個人の範囲での正義」
が試されることになった。人は正義の名の下に拳銃を使用する
ことが認められる。
案の定、国中はパニックになった。
お互いに監視しあい、意味のない殺戮も日常に行われている。
ある者は、自分が裁いた人間の銃を奪い、さらなる殺戮を
求めていた。
私は目の前にある冷たい鉄の塊を見ながら考えていた。
「この10発をどう使うか?」
まず頭に浮かんだのが、会社の上司だ。
彼の一言のせいで、私や周りの人間はとても神経的に
まいっていた。しかし、彼は気づかない。
もう殺されているかもしれないが、初めの一発は彼に
使うことに決めた。
その他に色々なことを思い出してみた。
人間が一番覚えていることは、楽しい思い出なんかより、
自分が体験した「恨み」のほうが強いのだろう。
今までに体験した忘れたい事実は、残り9発しかない
銃弾に絞り込むことができない。
どうにか8発の使い道をきめることができた。
残り2発。
この2つの使い道は最初から決まっていた。
1つは自分。
もう1つは愛する彼女。
おそらく、今の日本に安全な場所はない。
かすかな恨みでさえ、簡単に返すことができるようになり、
いつ、どこで、何が起こるかわからない。
狂った社会。そこで愛する彼女を守ることは、
10発の銃弾では難しいことだ。
おそらく彼女もわかってくれるだろう。
町では、当たり前のごとく、悲鳴が聞こえていた。
響く銃声。
そろそろ出かけよう。
そう思い私は立ち上がろうとした。
目の前には銃が置いてある。
さらにその奥には鏡がおいてあり、銃と私を不気味に写していた。
ふと、鏡をよく見た。
その隅に何か写っている。
そこには彼女が写っていた。
彼女は血まみれになり、肩で息をしながら銃口を私に向けていた。
鏡に映っている私は頭から血を流している。
もうすぐ死ぬことを考えながら、
私は10発の銃弾が入った拳銃を見つめていた。
ということを電車が上永谷の駅に到着したときに
考えていた。
その後、イトーヨーカドーで新しい「パイの実」を買って
家に帰った。